19.刑事事件

2016年10月25日 火曜日

弁護士が解説する刑事事件の流れ(2)~示談交渉~

前回記事「弁護士が解説する刑事事件の流れ(1)~刑事手続の全体像~」では刑事手続の全体像をまず俯瞰しました。
今回は、刑事事件の「示談(和解)」について解説します。

ちなみに、「示談」と「和解」の違い(互譲の有無)を気にする人もいますが、はっきり言って気にかける実益がありません。
紛争の蒸し返しを防止できる内容になってさえいればそれで用は足りるので、呼び名はどうでも良いです。
法律にあまり詳しくない一般の方は「示談」という単語を用いることが多いので、ここではまとめて「示談」と表記しておきます。



捜査は、捜査機関(警察)が捜査対象となる犯罪事実の発生を認識したことによって開始します。
ケースとして多いのは、
「被害者が犯罪事実を警察に届け出た」
「通報を受けて警察官が現場に臨場した」

というパターンでしょう。

一番良いのは捜査が開始する前に示談をまとめてしまうことです。
しかし、捜査が開始してしまった後、逮捕されてしまった後でも諦めることはありません。
起訴前に示談が成立すれば、不起訴となって刑事裁判を回避できることもあります。


原則として、示談の提案は加害者側から行います。
直接または警察等の第三者を通じて、加害者側に被害弁償(示談交渉)の意思があることを伝えます。

これに対して被害者側が、
「とりあえず加害者側の提案を聞いてもよい」
と考えれば、具体的な示談交渉が開始することになります。

このとき、被害者側が加害者本人との交渉に拒否反応を示すことがあります。
その場合には、加害者本人の家族や、弁護士等の第三者に示談交渉を依頼することになります。


交渉で第一に被害者側に伝えるべきは、被害者への謝罪。
次いで、被害者に支払うべき金額や支払方法。
さらに、被害届や告訴の扱いについてといったところです。
交渉の結果、双方折り合いがつけばその合意内容を書面にします。

必要な条項が欠けていると、追加で賠償金を支払う羽目になることもあるので、相当な注意が必要です。
合意書の作成に間違いは許されませんし、加害者本人と比べて弁護士の方が被害者側からの信用度が高く、示談の成功率も上がりますので、合意書の作成まで含めて示談交渉を弁護士に任せてしまうのが無難でしょう。


合意書を取り交わせば、とりあえず示談交渉は終了です。
既に捜査が開始している場合は、検察官に合意書を提示して、被害者との間で示談が成立したことを説明します。



今回は示談に関する記事なので、需要の高い「痴漢事件の示談金額の相場」にも少し触れておきます。

「痴漢の示談金は〇万円~〇万円が相場!」
と端的に言い切っているサイトもありますが、そう単純な話ではありません。


加害者から示談交渉の依頼を受けたとして、弁護士がまず考えるのは、
「訴訟提起されたらどの程度の慰謝料支払いを命じる判決が予想されるか」
ということです。
痴漢のケース1つとっても、故意の程度や行為態様の悪質性によって、数万円から100万円近くまで幅があります。
当該事案の事情を踏まえて、過去の類似の事件と照らし合わせて慰謝料額を予想し、被害者が訴訟提起した場合にかかる費用や手間を考慮した分を差し引いて、妥当と思われる価格帯を算定します。


次に、依頼者である加害者側の事情を検討します。
「加害者側は示談成立のためにいくらまで出せるのか」
という経済的事情です。
このくらいが妥当という金額を算定できても、加害者がその金額を出せないなら、加害者が工面できる金額が提示の上限となります。
逆に、資力があって、いくら払ってでも絶対に示談を成立させたい人であれば、提示の上限は高くなります。


最後に、交渉の相手方である被害者側の意向を加味します。
「被害者側はどの程度の金額を求めているのか」
という被害者側の希望条件です。
お金より真摯な反省を求める人もいますし、法外な金額を吹っかけてくる人もいますし、ネット等で得た『相場』の話をしてくる人もいます。


この3点を考慮しながら擦り合わせを行い、最終的な金額を決めていきます。
痴漢の示談交渉事件について言えば、私の経験上、20~40万円くらいで示談交渉がまとまることが多いです。



次回は、「逮捕」の手続について解説します。

投稿者 士道法律事務所

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