19.刑事事件

2017年12月26日 火曜日

弁護士が解説する刑事事件の流れ(10)~再審~

前回記事「弁護士が解説する刑事事件の流れ(9)~控訴・上告~」で、終局的な判決確定までの手続に触れました。
今回は、刑事裁判のやり直しである「再審」についてです。


決められた期間内に控訴や上告をしなかった場合や、控訴審や上告審の手続が全て完結した場合に判決は確定します。
確定した判決はもうそれ以上争うことができない。
それが大原則ですが、これに対する例外措置が「再審」です。


確定した判決の当否を争うとなりますので、再審が認められるのは極めて限定的なケースとなります。

①判決の基礎となった証拠が偽造であることが別の裁判で明らかとなったとき
②判決の基礎となった証言が虚偽であることが別の裁判で明らかとなったとき
③告訴をした被害者が虚偽告訴で有罪とされたとき
④判決の基礎となった他の事件の裁判が変更されたとき
⑤特許権侵害等の罪で、その権利を無効とする審決や判決があったとき
⑥無罪等を言い渡すべき明らかな証拠が新たに出てきたとき
⑦裁判官等が判決に関して犯罪行為に及んだことが別の裁判で明らかとなったとき



このいずれかに該当する事情がある場合には、再審の請求をすることができます。


再審請求をするのに期間的な制限はありません。
懲役刑を満了した後でも、被告人が死亡した後でもすることができます。
再審の結果無罪となれば刑事補償を受けることができますし、死者であっても名誉回復の必要はあるからです。


ただ、再審を開始してもらうための道のりは果てしなく遠く険しいと言わざるを得ません。
一度徹底的に裁判で争ったはずの事件を再びやり直そうというのです。
前記①~⑦に該当するような極めて特殊な事情がなければ扉は開きません。


再審が開始されると、証拠の再検討等を行って事件を洗い直していくことになります。
時折報道される再審事例では⑥のものが多いと言えます。


再審が始まったとしても、審理の結果、やはり従前と同じ結論となることもあります。
その場合には、その再審結果に対する控訴や上告を検討することとなります。


再審を行って、元の有罪判決が無罪と改められた場合。
この場合は当然に無罪の判決を言い渡すこととなります。
この結果は、官報だけでなく、新聞紙に掲載して判決を公示しなければならないとされています(刑訴法453条)。
社会的に大きな意味を持つ出来事なので新聞で広く国民に知らせないといけないということです。


ちなみに、死刑囚が再審請求する割合は他の刑と比べて高くなっています。
これは刑の重さによるところもあるでしょうが、
「再審請求中は死刑が執行されない慣習があるから」
とも言われています。
もっとも、これは絶対的な決まりではなく、単なる慣習です。
再審請求中に死刑が執行されたこともあり、再審請求を続けていればいつまでも死刑執行されずに済むというわけではありません。


以上、10回にわたって刑事事件の流れについて概要を解説してきました。
個別の論点については、また機会があれば別の記事で掘り下げたいと思います。

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2017年11月17日 金曜日

弁護士が解説する刑事事件の流れ(9)~控訴・上告~

前回の「弁護士が解説する刑事事件の流れ(8)~判決~」で第一審の手続の説明が一通り完了しました。
今回は、判決に不服がある場合の上訴(控訴・上告)の手続についてです。


日本の裁判では三審制を採用しており、同じ事件につき3回まで裁判を受けられることになっています。
第一審判決の後に行う不服申立は「控訴」で、ここでの審理を「控訴審」と言います。
控訴審判決の後に行う不服申立は「上告」で、ここでの審理を「上告審」と言います。

第一審が地方裁判所であれば、控訴審は高等裁判所、上告審は最高裁判所になります。
第一審が簡易裁判所であれば、控訴審は地方裁判所、上告審は高等裁判所になります。

控訴ができる期間は、「判決言渡しの翌日から2週間以内」と決められています。
上告も同じです。
控訴や上告をするのかということについては、十分な余裕をもって弁護人としっかり協議をしましょう。



控訴をするには法定の「控訴理由」が必要です。
といっても、控訴理由の1つに「量刑不当(刑訴法381条)」があるので、どんなケースでも控訴自体はできると理解していて問題ありません。
要するに、公訴事実を全て認めている自白事件であっても、「言い渡された刑が重過ぎる」とすれば控訴理由は調うからです。


ところで、第一審の判断が控訴審で覆される(減刑されるを含む)可能性はどのくらいあるのでしょうか。

答えは、「そんなことは滅多にない」です。

控訴審の9割は審理が行われることすらなく、「控訴棄却(第一審の判決変更の必要なし)」で終わるというくらいのイメージです。

というのも、控訴審で判断を覆すには、基本的に「第一審で現れていなかった新事実」を証拠とともに示す必要があるからです。
第一審で全力を尽くしたはずなのに、そのときには出てこなかった事実・証拠で、かつ第一審の判断を覆すほどのもの......
普通に考えれば、そんなものはない、ということになります。
比較的可能性の高そうな事実を挙げるなら、第一審判決後に被害者と示談が成立したようなケースでしょうか。
もっとも、判決が出てから示談に本腰を入れてくるような被告人と示談をまとめたいと思う被害者がどの程度いるのかは疑問ですが。



上告をする場合には法定の「上告理由」が必要となります。
これは控訴理由より格段にハードルが上がり、次のようなものに限られます。

・憲法違反または憲法解釈に誤りがある
・最高裁(大審院等含む)判例に反する判断がなされた
・その他法令違反や量刑の著しい不当、重大な事実誤認があり、原判決を破棄しなければ著しく正義に反する


どれもこれも通常はあり得ないものばかりです。
つまり、極めて例外的な特殊な事情がない限り上告はできないし、上告したところで門前払いされるということです。



このように、控訴にしても上告にしても、申立をすること自体はできますが、望む結果が得られることは極めて稀です。
逆転判決などというのは、それが滅多に起こらないことだからニュースになるのです。
控訴や上告で逆転の目もあるなどという考えは捨てて、第一審で納得いく結果が出るように全力を尽くしましょう。


次回は「再審」について説明します。

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2017年9月19日 火曜日

弁護士が解説する刑事事件の流れ(8)~判決~

前回の「弁護士が解説する刑事事件の流れ(7)~被告人勾留・公判~」では判決言渡し前までの公判手続を説明しました。
今回は刑事訴訟の締め、判決について述べます。


弁護人の「最終弁論」までの手続が完了すると刑事訴訟の審理は結審し、あとは判決言渡しを残すのみとなります。

結審までの手続を行う日と判決言渡しの日は原則として別日となります。
裁判官は、結審までに現れた全証拠に基づいて有罪無罪、刑の軽重を決するという建前があるからです。


判決の種類は、
「無罪判決」
「執行猶予判決」
「実刑判決」

の三種類となります。



まず「無罪判決」について。
何らかの罪を犯したとして起訴されたものの、審理の結果、有罪とは認められないこととなった、という判決です。

いかなる理由で無罪となるのかについては、
・構成要件に該当しない(刑法等で規定された罪の要件の一部または全部を満たさない、誤認逮捕や冤罪も含む)
・違法性が阻却された(正当防衛に該当する等)
・責任が阻却された(心神喪失に該当する等)

といったものがあります。

どういう形であれ、無罪となれば当然刑罰は受けませんし、前科がつくということもありません。

ちなみに、日本の刑事訴訟の有罪率は99.9%と言われています。
直近平成27年の裁判所の統計データから紐解いてみてもそう大差ない数値が出てきます。
データをどう扱うかによって若干の変動は生じますが、一部無罪の判決も考慮して単純に無罪件数を総事件数で割ります。

【地方裁判所】
無罪件数70件/事件総数74,111件=無罪率0.094%(有罪率99.906%)

【簡易裁判所】
無罪件数6件/事件総数7,951件=無罪率0.075%(有罪率99.925%)

http://www.courts.go.jp/app/files/toukei/616/008616.pdf
http://www.courts.go.jp/app/files/toukei/619/008619.pdf



次に「執行猶予判決」について。
有罪判決の一類型ですが、直ちに刑が執行されるわけではない、という特徴があります。

例えば「被告人を懲役2年に処す。ただし、その刑の執行を4年猶予する」という判決言渡しがなされたとします。
この場合、すぐに刑務所に放り込まれるわけではなく、4年の猶予期間が与えられることとなります。
判決確定から4年間、何事もなく平穏に過ごせば刑務所に行かずとも済みます。
ただし、4年以内に再び何らかの罪を犯した場合、高確率で猶予されていた刑が執行されます。

上記の例で、判決確定から3年経ったところで万引きをして捕まり、懲役6月の判決を言い渡されたとします。
その場合、執行を猶予されていた前の2年も含めて、2年6か月刑務所に行かねばならなくなるということです。

再度の執行猶予が認められるかどうかについては少々細かい話となるのでここでは割愛します。
執行猶予判決の場合、最低でも猶予期間中は細心の注意を払って生活しなければならない、ということは肝に銘じておいてください。

ちなみに、執行猶予期間中に軽微な交通違反をして反則金を支払うことになっても執行猶予が取り消されるわけではありません
もっとも、重い違反を犯して所謂赤切符を切られたらその限りではありませんので、自動車の運転にも十分気を付けましょう。



そして「実刑判決」について。
刑の種類としては、罰金刑、懲役刑、禁固刑、拘留刑、死刑があります。
いずれも実際に刑罰を受けることとなる判決です。

罰金刑の場合は、刑事裁判が終わってから定められた期限までに罰金を納付することになります。
期限内に納付しないと資産の差押を受けたり、労役に従事させられたりします。
なお、罰金刑にも執行猶予が付くことはありますが、実際には極めて稀です。

懲役刑、禁固刑、拘留刑は一定期間刑務所に収監される刑罰です。
刑務作業の従事義務があるのが懲役刑、ないのが禁固刑・拘留刑です。
禁固刑と拘留刑の違いは期間(禁固刑:1か月以上20年以下 拘留刑:1日以上1か月未満)です。
刑事裁判終了後、一旦拘置所に移されて、その後所定の刑務所に移送されることとなります。

死刑はその名のとおり、死をもって罪を償う刑罰です。
拘置所に収監されて、死刑執行の日まで未決囚としての状態が続くこととなります。


次回は「上訴」の手続について見てみます。

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2017年8月14日 月曜日

弁護士が解説する刑事事件の流れ(7)~被告人勾留・公判~

前回の「弁護士が解説する刑事事件の流れ(6)~保釈その2~」では保釈の説明を一通り終えました。
今回は保釈の前提となる被告人勾留に少し触れて、それから公判の流れを説明します。


被疑者の段階で身柄拘束(被疑者勾留)されていた場合、起訴されて被告人になっても普通は勾留が続きます。
ただし、起訴後は身分が「被疑者」から「被告人」に変わることから、起訴後の勾留は「被告人勾留」と呼ばれます。

被告人勾留は刑事裁判を追行するのに必要な身柄拘束です。
そのため、期間制限は被疑者勾留より遥かに長くなります。
期間制限は2か月、ただし必要性があれば1か月ずつの更新が認められます。
簡易な自白事件なら大体起訴から2、3か月で判決となりますし、否認等している重大事件ならほぼ無条件に更新の必要性が肯定されます。
ですから、公判が終わるまで被告人勾留による身柄拘束は続くものだと考えておいてください。

それを解くための現実的に有効な手段が、前回、前々回で触れた「保釈」というわけです。



さて、公判の流れですが、よくある簡易な事件を例にとってざっくり説明すると、次のような流れで進みます。

起訴
 
第1回公判期日
・人定質問(被告人の住所、本籍、氏名、生年月日、職業を口頭で確認)
・罪状認否(検察官が罪となる事実を読み上げ、被告人はそれに誤りがないか述べる)
・冒頭陳述(検察官が事件の経緯等を述べる)
・検察官立証(検察官が立証しようとしている事実や証拠について述べ、書証等の証拠調べを行う)
・弁護側立証(弁護側が立証しようとしている事実や証拠について述べ、証人尋問や被告人質問を行う)
・論告(検察官が判決や刑罰の内容についての意見を述べる)
・弁論(弁護人が判決や刑罰の内容についての意見を述べる)
・被告人の意見陳述(最後に何か言いたいことがあれば被告人が自分で述べる)
 
第2回公判期日
・判決言渡し(裁判官が判決の内容とその理由を述べる)



起訴から第1回公判期日までの間に、被告人は弁護人と公判の打ち合わせを行います。
主な打ち合わせ内容は、被告人質問の内容確認や予行演習です。


第1回公判期日で被告人がやるべきことは次のことです。

・人定質問で住所、本籍、氏名、生年月日、職業を述べること
・罪状認否で読み上げられた事実に誤りがないか回答すること
・被告人質問で弁護人、検察官、裁判官から質問された内容に答えること
・最後に何か言っておきたいことがあればこれを述べること


どれもそう難しいものではないのですが、人定質問の「本籍」は時々詰まる人がいます。
不安があれば本籍は事前にしっかり確認しておいた方がいいかもしれません。

ちなみに、人定質問でスムーズに答えられなかったとしても、裁判官が
「あなたの本籍地は〇〇で間違いないですか」
と起訴状記載の情報を読み上げてくれるので、現実的にほとんど問題はありません。


被告人の意見陳述では、反省の言葉や今後の更生について述べることが多いです。
何も言わなくてもいいですが、言いたいことがあれば30秒程度で話せることを用意しておいてもいいでしょう。
否認事件等でごく稀に裁判官、検察官、弁護人への不満や非難を延々と語る人がいますが、これは無意味どころか量刑に不利に働くだけなので、そういうことはやらない方よいです。


次回は「判決」について述べます。

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2017年3月15日 水曜日

弁護士が解説する刑事事件の流れ(6)~保釈その2~

前回の「弁護士が解説する刑事事件の流れ(5)~保釈その1~」に引き続き、今回も「保釈」について解説します。
裁判所が保釈を認める決定を出した、というところから話を始めます。

保釈請求書を裁判所に提出して、保釈が認められると、大体次のような許可決定が出ます。



 保釈許可決定
被告人 〇〇

被告人〇〇に対する〇〇事件について、弁護人〇〇から保釈の請求があったので、当裁判所は検察官の意見を聴いた上、以下のとおり決定する。

 主文
被告人の保釈を許可する。
保証金額は金〇万円とする。
釈放後は、下記の指定条件を誠実に守らなければならない。これに違反したときは、保釈を取り消され、保証金も没取されることがある。

 指定条件
被告人は、〇〇に居住しなければならない。住居を変更する必要ができたときは、書面で裁判所に申し出て許可を受けなければならない。
召喚を受けたときは、必ず定められた日時に出頭しなければならない。
逃げ隠れしたり、証拠隠滅と思われるような行為をしてはならない。
海外旅行または3日以上の旅行をする場合には、前もって裁判所に申し出て、許可を受けなければならない。
〇〇(被害者、共犯者等)とは、弁護人を介する場合を除いて、面会、電話、文書、電子メールその他いかなる方法によるとを問わず、一切接触してはならない。

 大阪地方裁判所 裁判官 〇〇



保釈許可決定が出る場合、保釈保証金(保釈金)の金額も同時に定められます。
被告人の経済状況にもよりますが、100万~300万円程度が中心的な金額帯です。
これを納めないと、身柄は解放されません。
当たり前ですが、「分割払いするので先に身柄解放を......」と言うことはできません。
減額の申し入れはできますが、経済状況が厳しいならば普通は保釈申立の時点でこれについても言及しているはずです。
それを踏まえての決定となりますので、減額に力を注ぐより、指定された金額の工面に努める方がいいでしょう。

本人の預貯金で保釈保証金を用意できない場合、次のような手段を検討することになります。

①家族、親戚、知人、金融機関からの借入
②日本保釈支援協会等の立替機関の利用
③全弁協保釈保証書発行事業の利用


①は何も難しいことはないので、②と③についてのみ解説します。


②は、日本保釈支援協会等に保釈保証金の立替を申し込む方法です。
審査が通れば、弁護人の預り口座に立替金が送金され、それを保釈保証金に充てることになります。

この方法を使う場合の注意点としては、以下のようなものがあります。
・被告人以外の者が申し込みをしなくてはならない(被告人以外の申込者が、没取の場合のリスクを負う)
・手数料を支払わなくてはならない(中心的な金額帯で、2か月ごとに4万~8万円程度)
・審査を通れば必ず全額を立て替えてもらえるというわけではない(一部自己負担を求められることもある)



③は、全弁協に保釈保証書の発行を申し込む方法です。
審査が通り、裁判所が保釈保証書による代納を許可し、自己負担金(保証金額の10%)を預託すれば、保釈保証書が発行され、これを裁判所に提出することになります。

この方法を使う場合の注意点としては、以下のようなものがあります。
・申込時に収入や資産に関する資料を提出しなければならない
・担保機能が不十分であることを理由に、裁判所が代納を許可しないことがある
・自己負担金は必ず用意しなくてはならない(ただし、後日返還される)
・手数料を支払わなくてはならない(保証金額の2%)



保釈保証金を納付し、または保釈保証書を代納して保釈されたら、
絶対に指定条件を破ることがないよう細心の注意を払って生活してください。

・出頭日と再就職先の面接日が重なり、裁判所に連絡せずに出頭をすっぽかした
・自宅を指定住所としていたのに交際相手の家に入り浸っていた
・被害者が友人や家族で、謝罪ならいいだろうと気軽に連絡を取った


指定条件を守って生活し、そのまま刑事訴訟が終われば、判決がどうであれ、保釈保証金は全額返ってきます。
しかし、指定条件を破ると、上記のようなケースでも、保釈保証金は没取(没収)され、保釈は取り消されます

刑事訴訟の手続は本当に厳格です。
「転居のことを弁護士や裁判所に連絡するのをうっかり忘れていた」
「ちょっとした挨拶や、反省の態度を示すことくらいなら大丈夫かと思った」

といったぬるい言い訳は一切通用しない、くらいに厳しく考えてください。


次回は、「被告人勾留」「公判」について見ていきます。

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

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