18.賃貸・不動産取引

2017年10月16日 月曜日

賃借人の立ち退きについて

今回は賃貸物件の立ち退きについてのお話を。

賃料を滞納する、他の住民と揉め事を起こす、部屋を雑に扱ってゴミ屋敷のようにしてしまう。
問題のある賃借人にどうやって退去してもらうかというのは大家、賃貸人にとって悩みの種となります。

賃貸借契約書のひな型には、大体「賃借人が賃料の支払いを〇か月(2、3か月となっていることが多いです)怠ったら契約を解除する」という条項が入っています。
では、これを1か月や2か月に設定しておいて、実際にその分の滞納があったら契約を解除できるのか。
答えは「ノー」です。

賃貸人の方から賃貸借契約を解除するには「信頼関係を破壊するに足る債務不履行が必要」という法理が判例上確立しているからです。
例えば「1か月でも滞納があったら即解除」という条項が契約書にあったとしてもこれは無効であり、契約解除の是非は信頼関係を破壊する事情の有無で決まります。

賃料不払いの場合であれば、3か月分以上の滞納があることが信頼関係破壊の目安となります。
騒音の場合は数か月以上夜中に騒音を出し続ける等。
ペットの飼育の場合はペット飼育禁止条項に反してペットを飼育し、かつ悪臭騒音等の実害を発生させたこと等が求められます。
それなりに重い違反がなければ賃貸借契約は解除できないということです。

契約解除ができるだけの違反があったとしても、賃借人が任意で出て行かない場合、最終的には訴訟や強制執行といった手段を取ることを考えなくてはなりません。
場合によっては、未払い賃料や原状回復の費用を回収できないどころか、家主側が転居費用を用意して「賃借人に退去して『いただく』」という事態になってしまうことも。

不誠実な賃借人に対して訴訟提起し、勝訴判決を得て強制執行をかけること自体はさほど難しくありません。
ただ、それにかかる弁護士費用や申立費用をどうするのかという問題は賃貸人に重くのしかかります。
そういった費用は法的にも現実的にも賃借人から回収することが難しいからです。

近年、保証会社による保証を要求する貸主が増えているのはこういった実情を踏まえたものといえるでしょう。
契約締結時に賃借人の人柄を見極めて、確実な保証人を要求すること。
それが賃貸借トラブルに対する賃貸人側の重要な対策となります。

(『蒼生 2017年10月号』掲載記事)

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

2017年6月16日 金曜日

民泊をめぐる法律問題(1)~民泊が注目される背景事情~

昨今、「民泊」という言葉を目にする機会が増えてきています。

「民泊」とはどういうものなのか。
違法行為なのか、適法行為なのか。
法律上、どのような問題点や注意点があるのか。

何回かに分けて見ていきたいと思います。


「民泊」というのは、元々は「民家に宿泊する(させる)こと」の意です。
もっとも、近年問題となってきているのは、「宿泊料を徴収して観光客等を自宅や賃貸物件に宿泊させるビジネス・副業」のことを指しますので、この記事ではこの意味に限定して「民泊」という言葉を使います。

「民泊」というものが注目を集めるようになった背景事情はいくつかあります。
その中で最も大きなものは次の2つです。

・日本を訪れる外国人観光客の急激な増加
・既存宿泊施設の収容能力不足


直近2016年の年間訪日外国人観光客の2403万9053人(日本政府観光局統計データ)。
10年前、2006年の年間訪日外国人観光客数、733万4077人から実に3倍以上の増加です。

この急激な訪日外国人観光客の増加にホテルや旅館等の宿泊施設の収容能力拡大が追い付かず、宿泊施設確保の代替的手段として、あるいは訪日外国人観光客のニーズ(主に料金面での要望)に応える形で、「民泊」が注目を集めるようになってきているのです。

日本を訪れる外国人観光客を増やすことは、国家戦略としても取り上げられています。
旅館業法の特例として適法に民泊を行えるようにするための法改正を行う、といったものがその表れです。

しかし、法律の改正・制定も、訪日外国人観光客増加のペースに追いつかず、ビジネスチャンスの到来とばかりに民泊に手を出す人が増えてきていることもあり、法的にはかなり微妙、というよりむしろ問題のある状況が目に付くようになってきている、というところです。


次回から、民泊を規制する法律の概要と、民泊を取り巻く法律問題について順次触れていきたいと思います。

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

2014年4月25日 金曜日

敷金のお話

 春、新生活のスタートに伴って転居される方も多いでしょう。
 最近は敷金ゼロの賃貸物件も珍しくありませんが、敷金を差し入れていた場合、退去時に敷金の返還が問題となることがあります。

 敷金とは、物件を借りる際に借主が貸主に差し入れるお金で、物件の明け渡しまでに貸主に生じた損害を補填するための預り金、つまり担保金です。
 「保証金」「協力金」といった名目になっていることもありますが、実態が担保金であればそれは敷金です。
 この「物件の明け渡しまでに貸主に生じた損害」として想定されるのは、ほとんどの場合、「未払い賃料」か「物件の汚損の修繕費」です。

 前者は賃料を払わない借主が悪いということがほとんどなのですが、後者は多額の修繕費を請求されて敷金がほとんど返ってこなかったり、追加費用を請求されたりして、その妥当性が問題となることがあります。
 実は、私も学生時代に借りていた部屋で敷金以上の修繕費を請求された経験があります。

 賃貸借契約を締結して物を借りた場合、借りた物は元の状態に戻して返さねばなりませんが、これは通常使用による摩耗汚損まで完璧に回復させるという意味ではありません。
 物を使っていれば摩耗汚損するのは当たり前で、その減価分は毎月の賃料によって補われているからです。
 そのため、日焼けした壁紙の交換や家具による床の凹みの修繕、業者の清掃などの費用は貸主が負担すべきとなります。
 もっとも、建具を壊した、台所の掃除を怠ってひどい油汚れを固着させた、結露を放置してカビを生じさせたというような場合、これは通常損耗を超えるとして借主が修繕費を負担しなくてはなりません。

 物件を普通に使っていたのに敷金を10万円20万円と差し引かれていたら、貸主と交渉し、場合によってはADR(裁判外紛争手続)等に頼るのも一つの手です。
 数千円の手数料であっさり敷金のほぼ全額が返ってくることもよくあります。

 ところで、先に述べた私のケース、「当時法律をちゃんと知っていたら断固争ったのに!」...と言いたいところですが、実は空手道部のたまり場となっていたので、通常損耗を超えるものがあったような気がしないでもありません。
 借りた物件をどう使ったかは後々自分に返ってきますので、新たに部屋等を借りる方は丁寧な使用を心掛けてください。

(『蒼生 4月号』掲載記事)

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

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