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2017年2月17日 金曜日

弁護士が解説する刑事事件の流れ(5)~保釈その1~

前回の「弁護士が解説する刑事事件の流れ(4)~被疑者勾留~」では、比較的長期間の身柄拘束処分である勾留(被疑者勾留)について説明しました。
今回は、「保釈」について解説します。


保釈というのは、簡単に説明すると、
「一定額のお金を裁判所に納付することで被告人の身柄拘束を解いてもらう手続」
のことです。

保釈という言葉は一般の方にも比較的馴染みのあるもののようで、保釈に関する質問をよく受けます。
保釈に関する依頼や質問として多いのは次のようなものです。

・いつから保釈が可能になるのですか(早く保釈の手続を取ってください)
・保釈が認められないことはありますか
・保釈にはいくらかかりますか(保釈金を用意できません)
・保釈された後はどうすればいいですか


これらの回答も含めて、順に見ていきましょう。


まず、保釈が可能になる時期について。
保釈は、「『被告人』の身柄拘束を解く」ものです。
前回説明しましたが、『被疑者』は起訴されることによって身分が『被告人』に変わります。
つまり、まだ『被告人』になっていない『被疑者』を保釈することは法律のルール上不可能です。

ですから、
「家族が3日前に逮捕されて今も警察署にいます。すぐ保釈手続を取ってください」
という依頼があっても、これに対する回答は、
「今の段階で保釈はできません」
「起訴されてから保釈請求を行うか、準抗告等を検討することになります」
となります。



次に、保釈の種類について。
保釈には、「必要的保釈(権利保釈)」「裁量保釈(職権保釈)」「義務的保釈」の3種類があります。
実務で実際に問題となるのは前二者がほとんどなので、これについてのみ触れます。


必要的保釈というのは、
「一定の場合に該当するケース以外では保釈請求があったら保釈しなくてはならない」
というものです(刑事訴訟法89条)。

「一定の場合」というのは、次のようなものです。
・死刑または無期もしくは短期1年以上の懲役もしくは禁固に当たる罪を犯したとき
・前に死刑または無期もしくは長期10年を超える懲役もしくは禁固に当たる罪の有罪宣告を受けたことがあるとき
・常習として長期3年以上の懲役または禁錮に当たる罪を犯したとき
・罪証隠滅を疑うに足りる相当な理由があるとき
・被害者等の身体もしくは財産に害を加え、これらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき


要するに、一定の危険性を有する被告人以外については、請求があれば原則として保釈は認めますよ、ということです。

もっとも、4番目と5番目がなかなか曲者で、一般的な罪証隠滅や証人等威迫のおそれを理由に保釈が許可されないことがあります。
そういう場合には、被告人がそういう行動に出ないことを説得的に裁判所に説く必要が出てきます。


裁量保釈というのは、
「必要的保釈が認められない場合でも、裁判所が適当と認めれば保釈できる」
というものです(刑事訴訟法90条)。

必要的保釈の除外事由の1~3番目に該当するが、保釈を認めても差し支えないような場合に認められる保釈です。
(4、5番目に該当するだけなら必要的保釈を認めれば済む話であるため)

したがって、
「保釈が認められない場合はありますか」
という質問に対する答えは、
「一定の重罪を犯した場合や、罪証隠滅、証人等威迫のおそれがある場合は保釈が認められないことがあります」
となります。


少々長くなりますので、今回はここまでとして、残りは次回に回します。

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

2017年1月11日 水曜日

弁護士が解説する刑事事件の流れ(4)~被疑者勾留~

前回の「弁護士が解説する刑事事件の流れ(3)~逮捕前の対処~」では逮捕の概要や逮捕前に取るべき対応について触れました。
今回は、「被疑者勾留」について解説します。


軽微な犯罪で罪を認めていれば、逮捕後すぐに釈放されることもあります。
しかし、そうでない場合には「勾留(被疑者勾留)」という次の身柄拘束処分に移行することになります。


勾留期間は原則として10日間。延長があれば最大20日間
一部犯罪では最大25日間となることもありますが、これは国家転覆に関わるような極めて例外的な犯罪に限られるので、無視して結構です。


被疑者勾留の終了の仕方は大きく次の3つに分類されます。

1.起訴されて身分が「被疑者」から「被告人」に変わる
2.起訴されずに釈放される
3.身柄解放手続で釈放される


順に見ていきましょう。


勾留期間満了までに検察官が起訴した場合、刑事裁判を受けねばならなくなります。
起訴されることにより、「被疑者」という身分が「被告人」に変わります。
勾留処分については、ほとんどの場合で「被疑者勾留」「被告人勾留」に変わります。
被告人勾留になると、基本的に刑事裁判終了まで身柄拘束処分が続くことになります。
被告人勾留に切り替わった後、留置場所が警察署から拘置所に変わることがあります。
これは、警察署や拘置所の混み具合にもより、必ず移送される、いつ移送されると決まっているわけではありません。


検察官が起訴せずに勾留期間満了を迎えた場合、身柄は解放されます
「起訴されなかった=不起訴」と考える人が多いですが、「不起訴(起訴しない)」という処分はさほど多くなく、ほとんどは「起訴猶予(起訴するかどうかをもう少し検討する」というものです。
といっても、逮捕勾留までしておきながら、釈放後に改めて起訴するというケースは多くはないので、起訴されずに勾留満期を迎えれば、その事件は一応終結したのだと考えてよいでしょう。
ただし、後日捜査機関から呼出があったときは、必ず出頭に応じるようにしてください


被疑者勾留は、ほとんどが上記のいずれかで終結します。
しかし、稀に身柄解放手続で釈放されて被疑者勾留が終結することがあります。
逮捕と異なり、勾留には次のような手続が用意されています。

勾留を決めた裁判に対する異議申立である準抗告または抗告。
勾留の理由または必要性がなくなった場合になされる勾留取消。
被疑者または被告人が病気になった場合等に認められる勾留の執行停止。


ただし、これらが認められることはほとんどありません。
司法統計と実際に異議申立を行った実感からの推測とはなりますが、異議申立をした方がいいと思われる事情がある事案で、異議申立をして、それが認められるのは数%以下といったところです。
極めて狭き門と言ってよいでしょう。
異議申立をすべき事情があるのであればもちろんこれを行うべきですが、現実的なところを考えると、起訴されて被告人勾留となった後の保釈手続の方を検討した方がよい、となります。

次回は「保釈」の手続について見ていきます。

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

2016年11月24日 木曜日

弁護士が解説する刑事事件の流れ(3)~逮捕前の対処~

前回の「弁護士が解説する刑事事件の流れ(2)~示談交渉~」では示談交渉の概要や示談金額について触れました。
今回は、「逮捕」「逮捕前に取るべき対処」について解説します。


逮捕には「通常逮捕」「緊急多穂」「現行犯逮捕」の3種類があります。

「通常逮捕」は、裁判官の発行する逮捕令状に基づいて行う逮捕です。
最も一般的な逮捕で、逮捕の原則型とも言えます。

「緊急逮捕」は、一定以上の重罪に該当し、緊急を要する場合に認められる逮捕です。
緊急逮捕をしたらその後直ちに裁判官に逮捕令状の発行を求める必要があります。

「現行犯逮捕」は、現行犯(犯行中の者、犯行直後の者)または準現行犯(一定の要件に該当し、犯行後間もない者)に対する逮捕です。
逮捕令状は必要なく、捜査機関でない一般人でも犯人を逮捕することができます。


逮捕された場合、釈放されなければ48時間以内に検察官に送致され、勾留という次の段階に進みます。
ちなみに、逮捕による身柄拘束を解くための異議申立、不服申立の手続は存在しません
そのため、逮捕されてしまったら勾留以降の手続で身柄解放の方法を検討することになります。



では、逮捕される「前」にすべきことはあるでしょうか。
緊急逮捕と現行犯逮捕については、「そもそも犯罪行為に走らない」以外の対処法がありませんので、通常逮捕を念頭に検討します。



捜査機関が通常逮捕を行うには、
「逮捕の理由(被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由)」

「逮捕の必要性(逃亡のおそれまたは罪証隠滅のおそれ)」
の有無を裁判官に判断してもらって、逮捕令状を発行してもらう必要があります。

しかし、裁判官の令状審査はフリーパス同然で、余程のことがなければ逮捕令状はそのまま発行されます。
そのため、被疑者側が手を打つとすれば、捜査機関が逮捕令状を請求する前、となります。


捜査機関にとって、被疑者を逮捕するメリットは次のようなものです。

・被疑者を監視下に置いて逃亡や罪証隠滅の可能性を軽減できる。
・捜査機関の都合のいい時に取り調べができるようになる。



その一方で、逮捕や被疑者勾留には時間制限があることから、

・逮捕してから2~3週間程度以内に捜査を完了させて処分を決めなくてはならない。

というデメリットもあります。


つまり、時間制限のある逮捕という手段によらなくても上記メリットを実現できることを示せばいいのです。

具体的には、
「捜査機関の出頭要請があれば必ずこれに従う」
「事情聴取の際には聞かれたことに素直に正直に答える」
「罪証隠滅を疑われるような行動を取らない」

といった対応を取ることが逮捕回避のために重要となります。


もちろん、こういった対応を取っていても、逮捕されるときは逮捕されます。
しかし、人身事故等の交通違反や、痴漢等の比較的軽微な犯罪は、上記対応で逮捕の可能性を大きく下げることができます。
また、並行して被害者との示談を進めることも逮捕回避に繋がります。


次回は「勾留」の手続について見ていきます。

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

2016年10月25日 火曜日

弁護士が解説する刑事事件の流れ(2)~示談交渉~

前回記事「弁護士が解説する刑事事件の流れ(1)~刑事手続の全体像~」では刑事手続の全体像をまず俯瞰しました。
今回は、刑事事件の「示談(和解)」について解説します。

ちなみに、「示談」と「和解」の違い(互譲の有無)を気にする人もいますが、はっきり言って気にかける実益がありません。
紛争の蒸し返しを防止できる内容になってさえいればそれで用は足りるので、呼び名はどうでも良いです。
法律にあまり詳しくない一般の方は「示談」という単語を用いることが多いので、ここではまとめて「示談」と表記しておきます。



捜査は、捜査機関(警察)が捜査対象となる犯罪事実の発生を認識したことによって開始します。
ケースとして多いのは、
「被害者が犯罪事実を警察に届け出た」
「通報を受けて警察官が現場に臨場した」

というパターンでしょう。

一番良いのは捜査が開始する前に示談をまとめてしまうことです。
しかし、捜査が開始してしまった後、逮捕されてしまった後でも諦めることはありません。
起訴前に示談が成立すれば、不起訴となって刑事裁判を回避できることもあります。


原則として、示談の提案は加害者側から行います。
直接または警察等の第三者を通じて、加害者側に被害弁償(示談交渉)の意思があることを伝えます。

これに対して被害者側が、
「とりあえず加害者側の提案を聞いてもよい」
と考えれば、具体的な示談交渉が開始することになります。

このとき、被害者側が加害者本人との交渉に拒否反応を示すことがあります。
その場合には、加害者本人の家族や、弁護士等の第三者に示談交渉を依頼することになります。


交渉で第一に被害者側に伝えるべきは、被害者への謝罪。
次いで、被害者に支払うべき金額や支払方法。
さらに、被害届や告訴の扱いについてといったところです。
交渉の結果、双方折り合いがつけばその合意内容を書面にします。

必要な条項が欠けていると、追加で賠償金を支払う羽目になることもあるので、相当な注意が必要です。
合意書の作成に間違いは許されませんし、加害者本人と比べて弁護士の方が被害者側からの信用度が高く、示談の成功率も上がりますので、合意書の作成まで含めて示談交渉を弁護士に任せてしまうのが無難でしょう。


合意書を取り交わせば、とりあえず示談交渉は終了です。
既に捜査が開始している場合は、検察官に合意書を提示して、被害者との間で示談が成立したことを説明します。



今回は示談に関する記事なので、需要の高い「痴漢事件の示談金額の相場」にも少し触れておきます。

「痴漢の示談金は〇万円~〇万円が相場!」
と端的に言い切っているサイトもありますが、そう単純な話ではありません。


加害者から示談交渉の依頼を受けたとして、弁護士がまず考えるのは、
「訴訟提起されたらどの程度の慰謝料支払いを命じる判決が予想されるか」
ということです。
痴漢のケース1つとっても、故意の程度や行為態様の悪質性によって、数万円から100万円近くまで幅があります。
当該事案の事情を踏まえて、過去の類似の事件と照らし合わせて慰謝料額を予想し、被害者が訴訟提起した場合にかかる費用や手間を考慮した分を差し引いて、妥当と思われる価格帯を算定します。


次に、依頼者である加害者側の事情を検討します。
「加害者側は示談成立のためにいくらまで出せるのか」
という経済的事情です。
このくらいが妥当という金額を算定できても、加害者がその金額を出せないなら、加害者が工面できる金額が提示の上限となります。
逆に、資力があって、いくら払ってでも絶対に示談を成立させたい人であれば、提示の上限は高くなります。


最後に、交渉の相手方である被害者側の意向を加味します。
「被害者側はどの程度の金額を求めているのか」
という被害者側の希望条件です。
お金より真摯な反省を求める人もいますし、法外な金額を吹っかけてくる人もいますし、ネット等で得た『相場』の話をしてくる人もいます。


この3点を考慮しながら擦り合わせを行い、最終的な金額を決めていきます。
痴漢の示談交渉事件について言えば、私の経験上、20~40万円くらいで示談交渉がまとまることが多いです。



次回は、「逮捕」の手続について解説します。

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

2016年10月14日 金曜日

刑事事件の身柄拘束

刑事事件の被疑者・被告人となったときに重くのしかかってくるのが身柄拘束の問題です。


軽微な事案で証拠隠滅や逃走のおそれが低ければ任意の事情聴取という形で普通に社会生活を送ったまま捜査を進めてもらうこともできますが、そうでなければ逮捕・勾留という措置が取られます。


原則として、逮捕で48時間、被疑者勾留で10日間(延長で最長20日間)。
その後起訴されて被告人勾留に切り替わると、裁判が終わるまでの数か月間、留置場や拘置所で生活することになります。
当然仕事には行けなくなり、家族等との連絡手段は平日30分の面会か手紙のみ。
ネットも使えず、服や下着の替えにも事欠きます。
まともな感覚の人なら相当苦痛を感じる環境と言えるでしょう。


身柄解放手続としては「保釈」があり、
 ①起訴後に
 ②裁判所の保釈許可を得て
 ③保釈金を納付
すれば、外に出ることができます。
保釈金の額は一般的には150~300万円程度ですが、場合によっては億を超えることも。
後で返還されるとはいえ、それなりにまとまった金額をすぐには用意できないという人の方が多いでしょう。


身柄拘束されている人は何故か「外にいる家族が自分のために尽力してくれる」と思い込んでいることが多いのですが、実際には本人と外の家族との間には相当な温度差があります。
家族にも生活があるのでそう頻繁に面会に来られませんし、普通は保釈金もそう簡単には用意できないので、大半は裁判が終わるまで身柄拘束されたままとなります。


このように、刑事事件の身柄拘束処分は普段私たちが当たり前のように享受している自由を奪われるという相当厳しい処分で、それを解くのも容易ではありません。
初めて逮捕・勾留された人は、5~6日目あたりからだいぶ精神的に参ってくるようです。
中には、何度も犯罪行為を繰り返して、身柄拘束されることにも手慣れた印象を受ける被疑者・被告人もいますが、本当に恐ろしいのは、感覚が鈍磨して身柄拘束の環境に慣れてしまうことなのかもしれません。


身柄拘束されるようなことをしないというのが当然に第一ではありますが、そのような事態に至ってしまったときには、その不自由さや苦痛を胸に刻んで、決して忘れないようにして欲しいものです。

(『蒼生 2016年10月号』掲載記事)

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