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2017年12月26日 火曜日

弁護士が解説する刑事事件の流れ(10)~再審~

前回記事「弁護士が解説する刑事事件の流れ(9)~控訴・上告~」で、終局的な判決確定までの手続に触れました。
今回は、刑事裁判のやり直しである「再審」についてです。


決められた期間内に控訴や上告をしなかった場合や、控訴審や上告審の手続が全て完結した場合に判決は確定します。
確定した判決はもうそれ以上争うことができない。
それが大原則ですが、これに対する例外措置が「再審」です。


確定した判決の当否を争うとなりますので、再審が認められるのは極めて限定的なケースとなります。

①判決の基礎となった証拠が偽造であることが別の裁判で明らかとなったとき
②判決の基礎となった証言が虚偽であることが別の裁判で明らかとなったとき
③告訴をした被害者が虚偽告訴で有罪とされたとき
④判決の基礎となった他の事件の裁判が変更されたとき
⑤特許権侵害等の罪で、その権利を無効とする審決や判決があったとき
⑥無罪等を言い渡すべき明らかな証拠が新たに出てきたとき
⑦裁判官等が判決に関して犯罪行為に及んだことが別の裁判で明らかとなったとき



このいずれかに該当する事情がある場合には、再審の請求をすることができます。


再審請求をするのに期間的な制限はありません。
懲役刑を満了した後でも、被告人が死亡した後でもすることができます。
再審の結果無罪となれば刑事補償を受けることができますし、死者であっても名誉回復の必要はあるからです。


ただ、再審を開始してもらうための道のりは果てしなく遠く険しいと言わざるを得ません。
一度徹底的に裁判で争ったはずの事件を再びやり直そうというのです。
前記①~⑦に該当するような極めて特殊な事情がなければ扉は開きません。


再審が開始されると、証拠の再検討等を行って事件を洗い直していくことになります。
時折報道される再審事例では⑥のものが多いと言えます。


再審が始まったとしても、審理の結果、やはり従前と同じ結論となることもあります。
その場合には、その再審結果に対する控訴や上告を検討することとなります。


再審を行って、元の有罪判決が無罪と改められた場合。
この場合は当然に無罪の判決を言い渡すこととなります。
この結果は、官報だけでなく、新聞紙に掲載して判決を公示しなければならないとされています(刑訴法453条)。
社会的に大きな意味を持つ出来事なので新聞で広く国民に知らせないといけないということです。


ちなみに、死刑囚が再審請求する割合は他の刑と比べて高くなっています。
これは刑の重さによるところもあるでしょうが、
「再審請求中は死刑が執行されない慣習があるから」
とも言われています。
もっとも、これは絶対的な決まりではなく、単なる慣習です。
再審請求中に死刑が執行されたこともあり、再審請求を続けていればいつまでも死刑執行されずに済むというわけではありません。


以上、10回にわたって刑事事件の流れについて概要を解説してきました。
個別の論点については、また機会があれば別の記事で掘り下げたいと思います。

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

2017年11月17日 金曜日

弁護士が解説する刑事事件の流れ(9)~控訴・上告~

前回の「弁護士が解説する刑事事件の流れ(8)~判決~」で第一審の手続の説明が一通り完了しました。
今回は、判決に不服がある場合の上訴(控訴・上告)の手続についてです。


日本の裁判では三審制を採用しており、同じ事件につき3回まで裁判を受けられることになっています。
第一審判決の後に行う不服申立は「控訴」で、ここでの審理を「控訴審」と言います。
控訴審判決の後に行う不服申立は「上告」で、ここでの審理を「上告審」と言います。

第一審が地方裁判所であれば、控訴審は高等裁判所、上告審は最高裁判所になります。
第一審が簡易裁判所であれば、控訴審は地方裁判所、上告審は高等裁判所になります。

控訴ができる期間は、「判決言渡しの翌日から2週間以内」と決められています。
上告も同じです。
控訴や上告をするのかということについては、十分な余裕をもって弁護人としっかり協議をしましょう。



控訴をするには法定の「控訴理由」が必要です。
といっても、控訴理由の1つに「量刑不当(刑訴法381条)」があるので、どんなケースでも控訴自体はできると理解していて問題ありません。
要するに、公訴事実を全て認めている自白事件であっても、「言い渡された刑が重過ぎる」とすれば控訴理由は調うからです。


ところで、第一審の判断が控訴審で覆される(減刑されるを含む)可能性はどのくらいあるのでしょうか。

答えは、「そんなことは滅多にない」です。

控訴審の9割は審理が行われることすらなく、「控訴棄却(第一審の判決変更の必要なし)」で終わるというくらいのイメージです。

というのも、控訴審で判断を覆すには、基本的に「第一審で現れていなかった新事実」を証拠とともに示す必要があるからです。
第一審で全力を尽くしたはずなのに、そのときには出てこなかった事実・証拠で、かつ第一審の判断を覆すほどのもの......
普通に考えれば、そんなものはない、ということになります。
比較的可能性の高そうな事実を挙げるなら、第一審判決後に被害者と示談が成立したようなケースでしょうか。
もっとも、判決が出てから示談に本腰を入れてくるような被告人と示談をまとめたいと思う被害者がどの程度いるのかは疑問ですが。



上告をする場合には法定の「上告理由」が必要となります。
これは控訴理由より格段にハードルが上がり、次のようなものに限られます。

・憲法違反または憲法解釈に誤りがある
・最高裁(大審院等含む)判例に反する判断がなされた
・その他法令違反や量刑の著しい不当、重大な事実誤認があり、原判決を破棄しなければ著しく正義に反する


どれもこれも通常はあり得ないものばかりです。
つまり、極めて例外的な特殊な事情がない限り上告はできないし、上告したところで門前払いされるということです。



このように、控訴にしても上告にしても、申立をすること自体はできますが、望む結果が得られることは極めて稀です。
逆転判決などというのは、それが滅多に起こらないことだからニュースになるのです。
控訴や上告で逆転の目もあるなどという考えは捨てて、第一審で納得いく結果が出るように全力を尽くしましょう。


次回は「再審」について説明します。

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

2017年10月16日 月曜日

賃借人の立ち退きについて

今回は賃貸物件の立ち退きについてのお話を。

賃料を滞納する、他の住民と揉め事を起こす、部屋を雑に扱ってゴミ屋敷のようにしてしまう。
問題のある賃借人にどうやって退去してもらうかというのは大家、賃貸人にとって悩みの種となります。

賃貸借契約書のひな型には、大体「賃借人が賃料の支払いを〇か月(2、3か月となっていることが多いです)怠ったら契約を解除する」という条項が入っています。
では、これを1か月や2か月に設定しておいて、実際にその分の滞納があったら契約を解除できるのか。
答えは「ノー」です。

賃貸人の方から賃貸借契約を解除するには「信頼関係を破壊するに足る債務不履行が必要」という法理が判例上確立しているからです。
例えば「1か月でも滞納があったら即解除」という条項が契約書にあったとしてもこれは無効であり、契約解除の是非は信頼関係を破壊する事情の有無で決まります。

賃料不払いの場合であれば、3か月分以上の滞納があることが信頼関係破壊の目安となります。
騒音の場合は数か月以上夜中に騒音を出し続ける等。
ペットの飼育の場合はペット飼育禁止条項に反してペットを飼育し、かつ悪臭騒音等の実害を発生させたこと等が求められます。
それなりに重い違反がなければ賃貸借契約は解除できないということです。

契約解除ができるだけの違反があったとしても、賃借人が任意で出て行かない場合、最終的には訴訟や強制執行といった手段を取ることを考えなくてはなりません。
場合によっては、未払い賃料や原状回復の費用を回収できないどころか、家主側が転居費用を用意して「賃借人に退去して『いただく』」という事態になってしまうことも。

不誠実な賃借人に対して訴訟提起し、勝訴判決を得て強制執行をかけること自体はさほど難しくありません。
ただ、それにかかる弁護士費用や申立費用をどうするのかという問題は賃貸人に重くのしかかります。
そういった費用は法的にも現実的にも賃借人から回収することが難しいからです。

近年、保証会社による保証を要求する貸主が増えているのはこういった実情を踏まえたものといえるでしょう。
契約締結時に賃借人の人柄を見極めて、確実な保証人を要求すること。
それが賃貸借トラブルに対する賃貸人側の重要な対策となります。

(『蒼生 2017年10月号』掲載記事)

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

2017年9月19日 火曜日

弁護士が解説する刑事事件の流れ(8)~判決~

前回の「弁護士が解説する刑事事件の流れ(7)~被告人勾留・公判~」では判決言渡し前までの公判手続を説明しました。
今回は刑事訴訟の締め、判決について述べます。


弁護人の「最終弁論」までの手続が完了すると刑事訴訟の審理は結審し、あとは判決言渡しを残すのみとなります。

結審までの手続を行う日と判決言渡しの日は原則として別日となります。
裁判官は、結審までに現れた全証拠に基づいて有罪無罪、刑の軽重を決するという建前があるからです。


判決の種類は、
「無罪判決」
「執行猶予判決」
「実刑判決」

の三種類となります。



まず「無罪判決」について。
何らかの罪を犯したとして起訴されたものの、審理の結果、有罪とは認められないこととなった、という判決です。

いかなる理由で無罪となるのかについては、
・構成要件に該当しない(刑法等で規定された罪の要件の一部または全部を満たさない、誤認逮捕や冤罪も含む)
・違法性が阻却された(正当防衛に該当する等)
・責任が阻却された(心神喪失に該当する等)

といったものがあります。

どういう形であれ、無罪となれば当然刑罰は受けませんし、前科がつくということもありません。

ちなみに、日本の刑事訴訟の有罪率は99.9%と言われています。
直近平成27年の裁判所の統計データから紐解いてみてもそう大差ない数値が出てきます。
データをどう扱うかによって若干の変動は生じますが、一部無罪の判決も考慮して単純に無罪件数を総事件数で割ります。

【地方裁判所】
無罪件数70件/事件総数74,111件=無罪率0.094%(有罪率99.906%)

【簡易裁判所】
無罪件数6件/事件総数7,951件=無罪率0.075%(有罪率99.925%)

http://www.courts.go.jp/app/files/toukei/616/008616.pdf
http://www.courts.go.jp/app/files/toukei/619/008619.pdf



次に「執行猶予判決」について。
有罪判決の一類型ですが、直ちに刑が執行されるわけではない、という特徴があります。

例えば「被告人を懲役2年に処す。ただし、その刑の執行を4年猶予する」という判決言渡しがなされたとします。
この場合、すぐに刑務所に放り込まれるわけではなく、4年の猶予期間が与えられることとなります。
判決確定から4年間、何事もなく平穏に過ごせば刑務所に行かずとも済みます。
ただし、4年以内に再び何らかの罪を犯した場合、高確率で猶予されていた刑が執行されます。

上記の例で、判決確定から3年経ったところで万引きをして捕まり、懲役6月の判決を言い渡されたとします。
その場合、執行を猶予されていた前の2年も含めて、2年6か月刑務所に行かねばならなくなるということです。

再度の執行猶予が認められるかどうかについては少々細かい話となるのでここでは割愛します。
執行猶予判決の場合、最低でも猶予期間中は細心の注意を払って生活しなければならない、ということは肝に銘じておいてください。

ちなみに、執行猶予期間中に軽微な交通違反をして反則金を支払うことになっても執行猶予が取り消されるわけではありません
もっとも、重い違反を犯して所謂赤切符を切られたらその限りではありませんので、自動車の運転にも十分気を付けましょう。



そして「実刑判決」について。
刑の種類としては、罰金刑、懲役刑、禁固刑、拘留刑、死刑があります。
いずれも実際に刑罰を受けることとなる判決です。

罰金刑の場合は、刑事裁判が終わってから定められた期限までに罰金を納付することになります。
期限内に納付しないと資産の差押を受けたり、労役に従事させられたりします。
なお、罰金刑にも執行猶予が付くことはありますが、実際には極めて稀です。

懲役刑、禁固刑、拘留刑は一定期間刑務所に収監される刑罰です。
刑務作業の従事義務があるのが懲役刑、ないのが禁固刑・拘留刑です。
禁固刑と拘留刑の違いは期間(禁固刑:1か月以上20年以下 拘留刑:1日以上1か月未満)です。
刑事裁判終了後、一旦拘置所に移されて、その後所定の刑務所に移送されることとなります。

死刑はその名のとおり、死をもって罪を償う刑罰です。
拘置所に収監されて、死刑執行の日まで未決囚としての状態が続くこととなります。


次回は「上訴」の手続について見てみます。

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

2017年8月14日 月曜日

弁護士が解説する刑事事件の流れ(7)~被告人勾留・公判~

前回の「弁護士が解説する刑事事件の流れ(6)~保釈その2~」では保釈の説明を一通り終えました。
今回は保釈の前提となる被告人勾留に少し触れて、それから公判の流れを説明します。


被疑者の段階で身柄拘束(被疑者勾留)されていた場合、起訴されて被告人になっても普通は勾留が続きます。
ただし、起訴後は身分が「被疑者」から「被告人」に変わることから、起訴後の勾留は「被告人勾留」と呼ばれます。

被告人勾留は刑事裁判を追行するのに必要な身柄拘束です。
そのため、期間制限は被疑者勾留より遥かに長くなります。
期間制限は2か月、ただし必要性があれば1か月ずつの更新が認められます。
簡易な自白事件なら大体起訴から2、3か月で判決となりますし、否認等している重大事件ならほぼ無条件に更新の必要性が肯定されます。
ですから、公判が終わるまで被告人勾留による身柄拘束は続くものだと考えておいてください。

それを解くための現実的に有効な手段が、前回、前々回で触れた「保釈」というわけです。



さて、公判の流れですが、よくある簡易な事件を例にとってざっくり説明すると、次のような流れで進みます。

起訴
 
第1回公判期日
・人定質問(被告人の住所、本籍、氏名、生年月日、職業を口頭で確認)
・罪状認否(検察官が罪となる事実を読み上げ、被告人はそれに誤りがないか述べる)
・冒頭陳述(検察官が事件の経緯等を述べる)
・検察官立証(検察官が立証しようとしている事実や証拠について述べ、書証等の証拠調べを行う)
・弁護側立証(弁護側が立証しようとしている事実や証拠について述べ、証人尋問や被告人質問を行う)
・論告(検察官が判決や刑罰の内容についての意見を述べる)
・弁論(弁護人が判決や刑罰の内容についての意見を述べる)
・被告人の意見陳述(最後に何か言いたいことがあれば被告人が自分で述べる)
 
第2回公判期日
・判決言渡し(裁判官が判決の内容とその理由を述べる)



起訴から第1回公判期日までの間に、被告人は弁護人と公判の打ち合わせを行います。
主な打ち合わせ内容は、被告人質問の内容確認や予行演習です。


第1回公判期日で被告人がやるべきことは次のことです。

・人定質問で住所、本籍、氏名、生年月日、職業を述べること
・罪状認否で読み上げられた事実に誤りがないか回答すること
・被告人質問で弁護人、検察官、裁判官から質問された内容に答えること
・最後に何か言っておきたいことがあればこれを述べること


どれもそう難しいものではないのですが、人定質問の「本籍」は時々詰まる人がいます。
不安があれば本籍は事前にしっかり確認しておいた方がいいかもしれません。

ちなみに、人定質問でスムーズに答えられなかったとしても、裁判官が
「あなたの本籍地は〇〇で間違いないですか」
と起訴状記載の情報を読み上げてくれるので、現実的にほとんど問題はありません。


被告人の意見陳述では、反省の言葉や今後の更生について述べることが多いです。
何も言わなくてもいいですが、言いたいことがあれば30秒程度で話せることを用意しておいてもいいでしょう。
否認事件等でごく稀に裁判官、検察官、弁護人への不満や非難を延々と語る人がいますが、これは無意味どころか量刑に不利に働くだけなので、そういうことはやらない方よいです。


次回は「判決」について述べます。

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

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