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2016年10月25日 火曜日

弁護士が解説する刑事事件の流れ(2)~示談交渉~

前回記事「弁護士が解説する刑事事件の流れ(1)~刑事手続の全体像~」では刑事手続の全体像をまず俯瞰しました。
今回は、刑事事件の「示談(和解)」について解説します。

ちなみに、「示談」と「和解」の違い(互譲の有無)を気にする人もいますが、はっきり言って気にかける実益がありません。
紛争の蒸し返しを防止できる内容になってさえいればそれで用は足りるので、呼び名はどうでも良いです。
法律にあまり詳しくない一般の方は「示談」という単語を用いることが多いので、ここではまとめて「示談」と表記しておきます。



捜査は、捜査機関(警察)が捜査対象となる犯罪事実の発生を認識したことによって開始します。
ケースとして多いのは、
「被害者が犯罪事実を警察に届け出た」
「通報を受けて警察官が現場に臨場した」

というパターンでしょう。

一番良いのは捜査が開始する前に示談をまとめてしまうことです。
しかし、捜査が開始してしまった後、逮捕されてしまった後でも諦めることはありません。
起訴前に示談が成立すれば、不起訴となって刑事裁判を回避できることもあります。


原則として、示談の提案は加害者側から行います。
直接または警察等の第三者を通じて、加害者側に被害弁償(示談交渉)の意思があることを伝えます。

これに対して被害者側が、
「とりあえず加害者側の提案を聞いてもよい」
と考えれば、具体的な示談交渉が開始することになります。

このとき、被害者側が加害者本人との交渉に拒否反応を示すことがあります。
その場合には、加害者本人の家族や、弁護士等の第三者に示談交渉を依頼することになります。


交渉で第一に被害者側に伝えるべきは、被害者への謝罪。
次いで、被害者に支払うべき金額や支払方法。
さらに、被害届や告訴の扱いについてといったところです。
交渉の結果、双方折り合いがつけばその合意内容を書面にします。

必要な条項が欠けていると、追加で賠償金を支払う羽目になることもあるので、相当な注意が必要です。
合意書の作成に間違いは許されませんし、加害者本人と比べて弁護士の方が被害者側からの信用度が高く、示談の成功率も上がりますので、合意書の作成まで含めて示談交渉を弁護士に任せてしまうのが無難でしょう。


合意書を取り交わせば、とりあえず示談交渉は終了です。
既に捜査が開始している場合は、検察官に合意書を提示して、被害者との間で示談が成立したことを説明します。



今回は示談に関する記事なので、需要の高い「痴漢事件の示談金額の相場」にも少し触れておきます。

「痴漢の示談金は〇万円~〇万円が相場!」
と端的に言い切っているサイトもありますが、そう単純な話ではありません。


加害者から示談交渉の依頼を受けたとして、弁護士がまず考えるのは、
「訴訟提起されたらどの程度の慰謝料支払いを命じる判決が予想されるか」
ということです。
痴漢のケース1つとっても、故意の程度や行為態様の悪質性によって、数万円から100万円近くまで幅があります。
当該事案の事情を踏まえて、過去の類似の事件と照らし合わせて慰謝料額を予想し、被害者が訴訟提起した場合にかかる費用や手間を考慮した分を差し引いて、妥当と思われる価格帯を算定します。


次に、依頼者である加害者側の事情を検討します。
「加害者側は示談成立のためにいくらまで出せるのか」
という経済的事情です。
このくらいが妥当という金額を算定できても、加害者がその金額を出せないなら、加害者が工面できる金額が提示の上限となります。
逆に、資力があって、いくら払ってでも絶対に示談を成立させたい人であれば、提示の上限は高くなります。


最後に、交渉の相手方である被害者側の意向を加味します。
「被害者側はどの程度の金額を求めているのか」
という被害者側の希望条件です。
お金より真摯な反省を求める人もいますし、法外な金額を吹っかけてくる人もいますし、ネット等で得た『相場』の話をしてくる人もいます。


この3点を考慮しながら擦り合わせを行い、最終的な金額を決めていきます。
痴漢の示談交渉事件について言えば、私の経験上、20~40万円くらいで示談交渉がまとまることが多いです。



次回は、「逮捕」の手続について解説します。

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

2016年10月14日 金曜日

刑事事件の身柄拘束

刑事事件の被疑者・被告人となったときに重くのしかかってくるのが身柄拘束の問題です。


軽微な事案で証拠隠滅や逃走のおそれが低ければ任意の事情聴取という形で普通に社会生活を送ったまま捜査を進めてもらうこともできますが、そうでなければ逮捕・勾留という措置が取られます。


原則として、逮捕で48時間、被疑者勾留で10日間(延長で最長20日間)。
その後起訴されて被告人勾留に切り替わると、裁判が終わるまでの数か月間、留置場や拘置所で生活することになります。
当然仕事には行けなくなり、家族等との連絡手段は平日30分の面会か手紙のみ。
ネットも使えず、服や下着の替えにも事欠きます。
まともな感覚の人なら相当苦痛を感じる環境と言えるでしょう。


身柄解放手続としては「保釈」があり、
 ①起訴後に
 ②裁判所の保釈許可を得て
 ③保釈金を納付
すれば、外に出ることができます。
保釈金の額は一般的には150~300万円程度ですが、場合によっては億を超えることも。
後で返還されるとはいえ、それなりにまとまった金額をすぐには用意できないという人の方が多いでしょう。


身柄拘束されている人は何故か「外にいる家族が自分のために尽力してくれる」と思い込んでいることが多いのですが、実際には本人と外の家族との間には相当な温度差があります。
家族にも生活があるのでそう頻繁に面会に来られませんし、普通は保釈金もそう簡単には用意できないので、大半は裁判が終わるまで身柄拘束されたままとなります。


このように、刑事事件の身柄拘束処分は普段私たちが当たり前のように享受している自由を奪われるという相当厳しい処分で、それを解くのも容易ではありません。
初めて逮捕・勾留された人は、5~6日目あたりからだいぶ精神的に参ってくるようです。
中には、何度も犯罪行為を繰り返して、身柄拘束されることにも手慣れた印象を受ける被疑者・被告人もいますが、本当に恐ろしいのは、感覚が鈍磨して身柄拘束の環境に慣れてしまうことなのかもしれません。


身柄拘束されるようなことをしないというのが当然に第一ではありますが、そのような事態に至ってしまったときには、その不自由さや苦痛を胸に刻んで、決して忘れないようにして欲しいものです。

(『蒼生 2016年10月号』掲載記事)

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

2016年10月 3日 月曜日

弁護士が解説する刑事事件の流れ(1)~刑事手続の全体像~

刑事手続はどのように進んでいくのでしょうか。
このコラムでは、何回かに分けて刑事事件の流れと、どの時点でどういう対応を取れば最悪の事態を回避できるのか、弁護士は専門家としてどのような活動を行っているのかといったことを解説していきたいと思います。

第1回目は、刑事事件の大まかな流れの説明です。
個別の手続の説明に入る前に、まずは手続の全体像を把握しておきましょう


刑事事件の基本的な流れは、概ね次のようなものです。
ここでは比較的よくあるケース、例えば窃盗・暴行・傷害・覚せい剤使用といった比較的軽微な犯罪(裁判員裁判の対象ではない事件)で、さほど複雑でない事案(争点整理が必要ない事件)を想定しています。
矢印の右に書いてあるのは、各手続に要する時間の目安や期間制限です。


1.犯罪事実が捜査機関に発覚し、捜査機関(警察官)の捜査が開始する。
 ↓即時~数か月程度
2.警察官が事件の関係者と思しき人(被疑者含む)から事情を聴く。
 ↓即時~数か月程度
3.身柄拘束が必要な場合、警察官が被疑者を逮捕する。
 ↓48時間以内
4.更なる身柄拘束が必要な場合、被疑者を勾留する(被疑者勾留)。
 ↓10日~20日以内
5.検察官が被疑者の処分(起訴・不起訴・勾留延長等)を検討する。
 ↓
6.起訴の場合、被疑者は「被告人」となり、勾留が継続する(被告人勾留)。
 ↓1か月~数か月程度
7.第1回公判期日が開かれる。
 ↓1週間~1か月程度
8.判決(無罪・執行猶予・実刑等)が言い渡される。
 ↓1か月程度
9.懲役の実刑判決の場合、刑務所に収監される。



上記はよくあるケースを想定したものなので、事件の性質、軽重、被疑者の状態等によって手続の流れは変化します。

弁護士が就任するタイミングは、国選なのか私選なのか、被疑者国選対象事件なのかどうかによって若干変わりますが、パターンとして最も多い被疑者国選なら上記「3」~「5」の間となります。

被害者が存在する事件で、示談交渉を検討するなら、通常は上記「1」~「5」の間となります。

勾留を解くための「保釈」ができるのは上記「6」~「8」の間となります。


次回から、各手続の具体的な内容や、その時点で被疑者・被告人が取るべき対応について解説していきます。

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

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