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2016年7月22日 金曜日

未払い残業代請求の流れ(4)~労働問題の裁判手続~

 前回の「未払い残業代請求の流れ(3)~裁判外での交渉開始~」で会社との交渉を行いました。
 交渉が不調に終わってしまったなら、次は裁判手続を検討することになります。
 今回のテーマは、「残業代請求の裁判手続にはどのようなものがあるか」です。


※労働問題解決の手段としては、労基署に相談してみる、労働局のあっせん手続を試みる、といった選択肢も一応あります。
 しかし、これらに弁護士が直接絡むことはほとんどいため、今回のシリーズでは割愛しています。


 稀に、交渉をすっ飛ばしていきなり審判申立や訴訟提起をする人もいますが、普通は事前交渉を試みた上で裁判手続を検討します。
 交渉で決着できれば訴訟費用がかかりませんし、常識的な手順を踏まないと感情的な対立が深まって結局解決が遠のくからです。

 残業代請求を含む労働問題を取り扱う場合の裁判手続は、基本的に次の2つです。

(1)労働審判
(2)訴訟



 「労働審判」は、ざっくりした言い方で説明するなら、
「訴訟(通常訴訟、正式裁判)の簡易版」
です。

 特徴として、以下のようなものが挙げられます。

・原則3回以内の期日(2~3か月)で終結する。
・労働審判官(裁判官)と2名の労働審判員(労組役員や企業経営者)が審理する。
・弁護士に依頼していても原則として本人が出頭しなくてはならない。
・審判官らが労働者、会社それぞれから直接言い分を聞く。
・立証に関する制限が訴訟の場合より緩やか。
・最終的に強制力のある結論が出る。
・結論に異議がある場合は訴訟に移行する。

 労働審判は労働問題に特化した特殊な手続で、最も大きな特徴が赤字で示した2つです。
 要するに、「短期間で明確な結論を出すことを目指す手続」ということです。


 「訴訟」は、所謂「裁判」と呼ばれるもので、裁判所を介した手続の中で最もスタンダードなものと言えるでしょう。
 労働審判との違いが分かるように特徴を挙げると、次のようになります。

・期日に制限がない(平均審理期間は約11か月)。
・通常は1名の裁判官が審理する。
・弁護士に依頼していれば基本的に本人は出頭しなくてもよい。
・書面による主張立証が基本で、労働者や会社関係者が直接言い分を述べる機会は原則終盤の尋問時のみ。
・立証に関する制限厳しい。
・最終的に強制力のある結論が出る。
・上訴(控訴、上告)をやり尽したらそれ以上結論に異議を述べられない。

 労働審判との比較という観点から訴訟の特徴を述べると、「ある程度時間をかけて明確な結論を出すことを目指す手続」となります。

 ちなみに、労働審判も訴訟も、基本的にはお互いの主張をぶつけ合って最終的に白黒ハッキリさせることを目指す手続ではありますが、どちらの手続でも裁判所は必ず和解の提案をして、和解による解決の可能性を探ってきます。
 そこで労働者と会社との間で合意が成立すれば、白黒つけるのではなく、「裁判上の和解(調停)」という形で事件は終結することになります。


 次回は、「労働審判はどのような手続なのか」ということをもう少し掘り下げて見ていきます。

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

2016年7月20日 水曜日

法律相談のコツ

 最近は役所や法テラスで弁護士に無料相談できる機会が増えていますが、役所等の法律相談は30分程度と短いのが普通です。
 そこで、今回は効率よく法律相談をするポイントをご説明します。


①関連資料を持参する
 具体的な資料があるとないとでは弁護士のアドバイスの正確性が大きく変わってきます。
 交通事故なら診断書や保険会社からの文書、労働問題なら雇用契約書やタイムカード、不動産問題なら登記事項や賃貸借契約書、というように、相談内容に関連しそうな資料があれば必ず持参しましょう。

②自分の話は程々に抑える
 愚痴のような事情説明が延々と続く相談者は意外と多いのですが、法律相談は本来30分5000円もするものですし、無料相談にも回数制限がありますから、弁護士のアドバイスを十分に聞いて帰らないと非常にもったいないです。
 喋りたい気持ちはぐっと抑えて、自分の話は長くとも15分以内に収めましょう。
 効果的なのは、
「いつ、誰が、誰に、何をして、どうなった」
「自分はどうしたいのか、何を質問したいのか」
を事前に紙に書いて、相談時に弁護士に渡して読んでもらう方法です。
 A4用紙1~2枚に収まる程度で十分で、これを超える場合は無駄な情報が多数含まれていると考えてよいでしょう。
 情報が足りていなければ後から弁護士が不足部分を聞いてきますので、あまり何でもかんでも伝えようとしないのが短時間で説明するコツです。

③目の前の弁護士に執着しない
 法律相談で思うような回答をしてもらえないことがありますが、そこで食い下がるのは無意味です。
 法的に通らない話なら弁護士に食って掛かってもどうにもなりませんし、弁護士によって見解が異なる問題なら自分の力になってくれそうな別の弁護士に依頼を検討すればよいだけの話だからです。
 相性もありますし、目の前の弁護士の回答や人柄が自分に合わないと感じたらその相談はさっさと切り上げて、次の弁護士を当たるのが賢明です。



 法律相談で問題が解決するかどうかは、相談者が法律相談をどう活用するかにもよります。
 法律相談するときは、せっかくの機会を無駄にしないように、これらのポイントに気を付けてみてください。

(『蒼生 2016年7月号』掲載記事)

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

2016年7月14日 木曜日

未払い残業代請求の流れ(3)~裁判外での交渉開始~

 前回記事、「未払い残業代請求の流れ(2)~通知書の作成と送付~」で、会社に対して通知書を送りました。
 ここから使用者である会社、雇い主との交渉が始まります。
 今回は、「裁判外でどのように残業代請求の交渉が進んでいくのか」ということを見ていきます。


 通知書を受け取った会社の対応は、「無視する」「労働者に何らかの回答をする」かの二択となります。

 会社が「無視する」を選択した場合、労働者側としては「諦める」か「次の手(訴訟等)に移行する」かを検討することになります。
 これは次回の記事で紹介するとして、今回は「会社が労働者に何らかの回答をしてきた場合」の話です。


 未払い残業代としてある程度まとまった金額を請求した場合、会社がおとなしくこれに応じることはまずありません。
 大抵、どこかのポイントで認識の相違があって争いが生じます。
 典型的なのは次のようなものです。

(A)労働者の主張する残業時間と会社の認識している残業時間が違う。
(B)残業手当を払っており、これ以上払うべき残業代はない。
(C)管理監督者なので残業代の支払い対象者ではない。


 労働者側は、会社の反論に応じて再反論することになります。

 (A)でよくあるのは、会社にタイムカードがない、またはタイムカードはあるがタイムカード打刻後も仕事をしていたというケースですが、この場合は、労働者が残業をしていた証拠の有無が問題となります。
 証拠としてあり得るのは、仕事用のメールやLINEの送信履歴、会社で印刷した資料に印字された印刷日時、労働者のメモ等です。
 ただし、何でも出せばいいというものではなく、メールや印刷物の内容によっては後でこちらが手痛い反撃を受ける可能性もある、メモは証拠価値が低い、といったことを考えながら証拠の選定をする必要があります。

 (B)は、残業手当の内容、殊に、定額残業代制の有効性という法律上の問題を考える必要が出てきます。
 定額残業代とか、固定残業代とか、要するに残業時間に関わらず一定の残業代を払うという制度が有効か否かということです。
 裁判例等から、これが有効とされるためにはいくつかの要件が必要なのですが、労働者側としてはその要件を1つ1つ検討して、会社の言い分を否定することになります。

 (C)は、労働基準法41条2号の適用の有無という法律上の問題を考える必要が出てきます。
 一時問題となった、「名ばかり店長」の問題がこれに該当します。
 労働者が「管理監督者」に該当する場合、会社は残業代(の一部)を支払わなくてよいことになるので、裁判例等に照らして、労働者が「管理監督者」に該当しないということを反論しなくてはなりません。


 こうやって、主張、反論、再反論、とやり取りを続けることになりますが、最終的に交渉で会社を論破・屈服させる必要は特にありません。
 どちらがどの程度優勢なのか、劣勢なのか、ということを双方が何となく認識できて、ざっくりこのくらいの金額で手を打てればいいか、と考えることができれば、それで交渉による解決の糸口は掴めます。
 そこまで行けば、あとは金額の擦り合わせだけの問題で、解決金の額が決まれば、合意書を作成して金銭授受を済ませて終了となります。


 では、この裁判外の交渉に弁護士が出てきた場合にはどうなるか。
 経験上、労働者から残業代請求等の通知書が来た場合、会社(使用者)側は高確率で弁護士に交渉を依頼します。
 会社側の弁護士は当然に法的な話を絡めた反論をしてきますから、これに的確に再反論できないと一気に不利な立場に置かれてしまいます。

 労働者側も弁護士に依頼していた場合、以後は双方の弁護士同士で交渉を行うことになります。
 双方に弁護士がついていれば、お互いにその残業代請求の法的ポイントがどこにあるのかはわかるので、(A)の証拠価値、(B)(C)の要件の是非といった判断が正確にできるようになります。
 そうなると、情勢の有利不利、訴訟等に移行する可能性、時間・費用と解決金のコストバランス、という認識の擦り合わせも迅速かつ正確にできるようになるので、早い段階で妥当な和解のラインが図れることになります。

 和解の骨子がまとまれば、弁護士が合意書を作成します。
 プロとして、紛争の蒸し返し防止や履行の確実性の確保といった点にも留意した合意書が作成されますので、合意書締結後に問題が再燃する可能性は低く抑えられることになります。

 もちろん、弁護士が妥当だと考える案に会社や労働者本人が納得しなければ和解は成立しませんので、弁護士が代理人として入っていても、交渉が決裂するときには決裂します。
 そうなれば、請求する側である労働者が、次の手段に移るかどうかを検討することになります。


 次回は、「交渉が不調に終わった場合、どういう法的手続があるのか」ということを見ていきます。

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

2016年7月 1日 金曜日

4周年

 この7月1日で士道法律事務所は事務所開設から4周年を迎えました。

 事務所立ち上げから早4年。
 依頼された事件に1件1件取り組んで、気付けばこれだけの年月が経過していたということに自分でも少々驚きを覚えます。

 時が経つごとにお問い合わせや相談、受任の件数も増え、当事務所に持ち込まれた事件はこの4年で400件を超えました。
 大阪の弁護士の数は4000人超、事務所数は約2000事務所ですが、これだけ多くの弁護士・法律事務所の中から当事務所を選んでいただいたことを本当にありがたく、嬉しく思います。

 同時に、未払い残業代や解雇等の労働問題、交通事故の示談交渉、不動産に関するトラブル、刑事事件等、悩みを抱えて弁護士に相談したいと考える方がこれほどいるのだという事実を前にして、より一層身が引き締まる思いがします。

 初心を忘れず、来年も再来年もその後も、悩みを抱える人たちの力になれるように。
 これからも士道法律事務所は皆様のために邁進してまいりたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

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