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2013年11月 7日 木曜日

婚外子への平等相続は家族制度を崩壊させるか

 平成25年9月4日、非嫡出子(婚外子)の相続分を嫡出子の半分とする民法900条4号を「違憲」とする最高裁決定が出ました。
 
 これに関して政界では、いわゆる保守派の議員が今回の最高裁決定を受けた法改正に反発している模様です。

 中学校で習う三権分立や違憲審査を理解できていないのではないかと心配になってくるような暴論は見なかった振りをして差し上げるとして、私が気になったのは「家族制度が崩壊する」という意見です。

 論理の流れがはっきりしませんが、
 「最高裁に従った法改正をすると、婚外子が増えて家族制度が崩壊する。」
のだそうです。


 今回の最高裁決定や法改正を受けて、
 「よし、これで子どもの相続分は平等になるから、心置きなく浮気して子どもを作れるぞ!」
と考える人が続出するとでも言うのでしょうか。
 
 そんな馬鹿なこと、あるわけがないでしょう。
 子どもの法定相続分のことを考えながらセックスする特異な性癖の持ち主がいるなら、是非一度お目にかかりたい。
 その方はきっと私が見たことも聞いたこともないようなサイケデリックな世界観を語ってくれるはずです。
 


 民法900条4号が意味を持つのは、嫡出子と非嫡出子が同時に存在する場合に限られます。
 (例:父Xには妻Aと浮気相手Bがおり、Aとの間の子C、Bとの間の子Dがいる。)
 (例:父Xは前妻Aと死別した後、女性Bと事実婚状態に入り、Aとの間の子C、Bとの間の子Dがいる。)

 したがって、非嫡出子しかいないようなケースでは民法900条4号の問題が生じることはありません。
 (例:父Xには事実婚状態の女性Bがおり、Bとの間に子C、子Dがいる。)
 (例:父Xは女性Yとの間に子Cを設けた後にYと別れ、次に女性Bとの間に子Dを設けたが、Xは誰とも結婚していない。)

 家族制度を守りたいなら後者のパターンをどうにかすべきなのですが、残念ながらこれは今回の最高裁決定と無関係です。
 最高裁決定と家族制度崩壊を結び付けるには、最高裁決定(あるいは法改正)『によって』人々が婚外子を積極的に作るようになり、『その結果』家族制度が崩壊する、という因果の流れが必要なのですが、それが全く見えません。



 一方、事案の具体的内容から最高裁決定を批判する意見もあります。
 今回争われた事件は、概略次のような事例でした。

 「父Xと妻Aは婚姻していたが、Xは浮気相手Bと肉体関係を持った。
  XとAとの間には子C(嫡出子)と子D(嫡出子)がいた。
  XとBとの間に子E(非嫡出子)と子F(非嫡出子)が生まれた。
  AはXの経営する店舗で身を粉にして働いていた。
  XはAを家から追い出してBを迎え入れ、Aを冷遇した。
  その後Xは死亡し、民法900条4号の合憲性が争われた。」

 AやC、Dが気の毒だから、EやFの相続分をC・Dと同等にするのはけしからん、という論調です。

 しかし...どう考えても悪いのはX(あるいはB)でしょう、これ。
 X(あるいはB)がひどいことをしたとして、その責をEやFに負わせようというのは八つ当たり以外の何物でもありません。
 EやFは親を選べないし、生まれる前のことはどうしようもないのですから。

 仮に、これとは逆に、B・E・Fが妾とその子としてAらからいじめられていたと言うケースだったらどうでしょうか。
 Bに相続権はなく、E・FはC・Dの半分の相続権しかないことになりますが、この場合のE・Fは気の毒ではないのでしょうか。

 こういう個別のケースで公平妥当な結論を目指すため、従前の家庭環境を考慮して審判で相続分を決めようとか、あるいはそのための立法を検討しようとか言う話ならわかります。
 ですが、それを法律の合憲違憲の話に飛躍させるのは無理があります。

 「親の不貞の罪は子が負うべし」
 「妾の子は差別されても仕方ない、むしろ差別すべきだ」
という考えに基づく見解であるなら、もはや論外と言わざるを得ません。



 私は、「万人はすべからく平等でなくてはならない」などという考えを掲げるつもりはありません。
 生まれながらの能力差、家庭環境、努力の程度や偶然の作用で各々の人生や幸福度に差異は生じます。
 生き物なのだからそれは当たり前のことであり、そこに行き過ぎた平等意識を持ち込んでも歪な平等が生まれるだけです。

 ただ、己の意思では如何ともし難い、出自のみを理由とする不条理な不平等があるのなら、それを是正することに大きな問題があるとは思えません。
 今回の最高裁決定は、過度の平等を強いるものではなく、法令違憲の判断は当然の帰結と考えます。


 仮に、今回の最高裁決定で家族制度が崩壊するようなことがあったとしても。
 それは、人々が家族制度なるものにその程度の価値しか認めていなかったことの証左となるだけのことでしょう。
 本当に素晴らしい価値あるものであるならば、最高裁決定ごときでその輝きが色褪せることはないはずですので。

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

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