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2019年10月30日 水曜日

あおり運転について

昨今ニュース等で取り上げられることの多いあおり運転。
あおり運転にはどのような法的問題があり、どう対処するのが適切なのでしょうか。


あおり運転とは、極端に他の車両との車間距離を詰めたり幅寄せを行ったりする、執拗に追い回す、進路上に割り込んで急ブレーキを踏むといった危険な運転を行って他の車両を煽る行為の総称です。
罵声を浴びせる、車を止めさせて暴力を振るう等の行為を含むこともあります。
これらの行為に及んだ場合、まず問題となるのは刑事上の責任です。


例えば車間距離を詰め過ぎれば『車間距離不保持』、危険な幅寄せを行ったり罵声を浴びせたりすれば『暴行』、被害者が死傷すれば『危険運転致死傷』『傷害』『殺人』といった罪が成立することがあり得ます。
東名高速で停車させられた被害者が死亡した事件では『監禁致死』の適用も検討されました。

また、車をぶつけたり被害者を死傷させたりすれば民事上の損害賠償責任も問題となります。


あおり運転を受けた場合、最優先で考えるべきは『死傷に繋がるような被害を避けること』です。
具体的には「逃げる」「車外に出ない」「窓やドアを開けない」「警察に通報する」といった対処となります。
もし逃げ切れず、降車した相手が近付いてきて車体を叩く等してきても、車内に籠っていれば身の安全は確保できます。
車体は人間の腕力でそう簡単に破壊できるものではなく、車が多少損傷してもそんなものは後からどうにでもなります。
その上で110番通報して警察の到着を待ち、可能ならスマホ等で相手の顔や暴行の状況を撮影してください。


その後の刑事・民事の手続のことを考えると、前方・後方を録画できるドライブレコーダーを予め車に搭載しておくのがお勧めです。
これがあれば一般的な交通事故の際の事故状況確認にも使えるので有用な設備投資といえます。


あおり運転をする人間は逮捕後に決まって「相手が先にあおり行為や危険な運転をした」という言い訳をします。
残念ながらその言い訳は通用しません。
警察はあおり運転の取締りを強化していますし、世間の目も厳しくなっています。
あおり運転の代償は想像以上に重いので、自動車を運転するときは危険な乗り物を扱っているという自覚を持ち、些細なことでイライラせず、安全遵守に努めてください。


(『蒼生 2019年10月号』掲載記事)

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

2019年9月13日 金曜日

時効について②

今回は刑事の時効について。


刑事の時効には

『刑の時効(刑の言渡しから一定期間経過することで刑の執行が免除される)』



『公訴時効(犯罪終了から一定期間経過することで公訴提起ができなくなる)』

の二種類がありますが、一般に『刑事の時効』と言えば後者を指します。


公訴時効が完成するまでの期間は問題となる罪の重さで決まります。
最短で一年、最長で三十年。
殺人や強盗致死といった特に重大な犯罪については法改正で公訴時効が撤廃されたため、これらの罪に当たる場合は何年経っても時効が完成しません。

公訴時効は一定の事由発生で停止することがあります。
簡単に言うと

「犯人または共犯者が公訴提起されたとき」

「被疑者が国外逃亡しているとき」

です。

刑事裁判ドラマなどで、時効完成間際に犯人を逮捕できた、というシーンが出てくることがあるのでご存じの方もいるかもしれません。
もっとも『逮捕』では公訴時効が停止しないので、時効完成の2、3週間前には逮捕しておかないと結局間に合わなくなる可能性が出てくるのですが。


公訴時効制度に対しては「犯人の逃げ得を許すのはおかしい」という批判の声が昔から上げられてきました。
このような制度が存在する根拠についてはいくつかの学説があります。
時間の経過で処罰感情が減少する、証拠の散逸や経年劣化で事実認定が困難になる、事件の関係者がいつまでも犯人と疑われる状態を解消する必要がある、などなど。

他国に目を向けると、例えばドイツでは謀殺罪の時効が何度も延長された末に時効自体が廃止されました。
これはナチス犯罪に対する諸外国の圧力を受けたものと言われています。

アメリカでは性犯罪の事件現場に残されたDNAに人格権を与えて起訴することで時効を停止する制度が作られています。


時効完成後に真犯人が名乗り出たことで真相が明らかとなって、犯人扱いされていた人の冤罪が晴れたり、民事上の損害賠償が認められたりしたケースもあり、時効の緩和に否定的な声もあります。
しかし、時効の廃止や延長、時効停止の新制度策定を求める声は強く、少しずつ制度が見直されています。


今後さらに技術が進歩して捜査手法が革新的に変化すれば、時効は教科書の中だけに存在する過去の制度となってしまうのかもしれません。


(『蒼生 2019年7月号』掲載記事)

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

2019年7月 1日 月曜日

7周年

士道法律事務所を開設してから7年が経ちました。

この時期を迎えるといつも
「あれ、そんなに経ったっけ?」
と思ってしまいます。

この7年を振り返ってみると色々な出来事がありました。
良いことも悪いことも含めての7年です。


受任する事件の種類や内容も少しずつ変化してきています。

例えば、過払い請求の依頼は全くなくなりました。
7年前の時点で過払いバブルと呼ばれるものは既に終焉期を迎えており、その当時でも依頼件数は少なかったのですが。
債務整理の広告は全く打ってこなかったこともあり、今は相談自体がありません。
過払い金の問題を抱えていた人たちの事件が大半解決したのだと考えれば、それはそれでよいことだと思います。

労働問題に関して言えば、残業代請求の相談が減り、代わりに不当解雇やパワハラセクハラの相談が増えました。
法整備や会社側の意識変化といった社会全体の大きな流れによるものではないかと考えています。

その他では不動産・建築関係や刑事示談交渉の依頼が増えました。
7年前には相談自体がほとんどなかった種類の事件です。
これらについてはご縁があって事件処理を続けているうちに問い合わせの件数が増えてきたかなという印象です。


来年は私が弁護士登録を行ってから10年目の年です。
10年というと長い時間のはずですが、前々実感が湧きません。
それでも多くの人たちに支えられてここまで来たことは間違いない事実です。

更なる節目に向かって一歩ずつ進んでいきたいと思います。
これからも士道法律事務所をよろしくお願いいたします。

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

2019年6月21日 金曜日

時効について①

「時効」という言葉を聞いたことがないという人はほとんどいないでしょうが、時効の内容をきちんと知っている人は少ないのではないかと思います。

民事・刑事いずれにも時効という制度がありますが、まずは民事から。

民事上の時効には時間の経過で権利を取得する「取得時効」と、権利を喪失する「消滅時効」の二種類があります。
取得時効が問題となるのはほとんどの場合が土地の所有権です。
10年または20年、所有の意思をもって平穏かつ公然に他人の物を占有することでその物の権利を取得する、とされています。
10年と20年の違いは占有開始時にそれが他人の物であると過失なく信じていたか否か、です。

例えば土地を購入したときの図面が間違っていて他人の土地にまたがって家を建ててしまったとします。
そこが他人の土地だと知らなければ10年、知っていたとしても20年家が建ち続けていれば家の下の越境部分の土地につき取得時効が成立します。

ちなみに「所有の意思をもって」占有することが要件なので、賃貸物件を20年以上借り続けてもその物件を時効取得することはありません。


消滅時効は、原則として10年間権利を行使しないとその権利が消滅するというものです。
例えば友人にお金を貸したとして、返済期限を過ぎても返済がないまま10年が経過すればその貸金を取り立てる権利が消滅してしまいます。

現行法ではこの10年の消滅時効の例外として1年、2年、3年、5年の短期消滅時効というものが定められていました。
が、これはややこしいので2020年4月からは
「権利を行使できると知った時から5年、または権利を行使できるときから10年、いずれか早く到達する方」
で権利が時効消滅する、と改正されることになっています。


消滅時効でよく勘違いされるのが「請求をかけ続けていれば消滅時効は完成しない」というものです。
時効を中断する方法は、

「民事裁判を提起して裁判上の請求をする」
「差押、仮差押、仮処分をする」
「相手方に債務を承認させる」

この三つのみ。

裁判外で内容証明郵便等による請求を行ったとしても、そこから6か月以内に提訴や差押をしないと時効中断の効力は生じないので注意が必要です。


次回は刑事の時効について触れます。


(『蒼生 2019年4月号』掲載記事)

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

2019年4月17日 水曜日

法律文書の和暦表記

明けましておめでとうございます。
年が明けて新たな一年が始まりました。

今年の5月には改元が予定されており、これが平成最後の年始となります。
新元号の公表時期は改元の1か月前が想定されているとのことで、新しい元号がどのようなものになるのかが話題に上る機会も増えてきました。


さて、元号の変更というのは法律家にとってそれなりに重要な意味を持ちます。
裁判所での事件管理は和暦ベースでなされ、各種公文書で時期を表示するときは基本的に和暦が用いられるからです。

例えば、訴えが提起されると『平成31年(ワ)第〇〇号』といった形で事件番号が割り振られます。
改元後に受理された事件はこの頭の部分が変わることになります。

また、判決書は公文書なので原則として和暦が用いられます。

弁護士が作成する訴状や準備書面といった法律文書もこれに合わせて和暦で時期を表記することが多いです。


「公文書は和暦で表記しなければならない」という法令があるわけではなく、和暦表記は単なる慣行です。
公文書に西暦を併記することや西暦表記に統一することの是非が最近政府内で検討されたようですが、従前のままでいく方針で固まりました。

法律文書の和暦単独表記の是非については弁護士の間でも意見が分かれているようです。

否定派は和暦の不便さを挙げることが多いです。
期間や時期、年齢が争点に絡んでくるようなケースでは西暦だと単純な引き算でぱっと計算できるが和暦だと余計な計算が増える、海外が関係してくる事例だといちいち和暦と西暦を対照させなければならない、そういった手間を考えると和暦単独表記は合理的でない、という理由によるものです。

肯定派は日本の公文書なのだから和暦で当り前、キリスト教文化に基づく西暦に合わせる必要性がない、今はアプリで簡単に計算もできるし換算の手間など知れている、という意見が多いようです。

合理性を重視する否定派、文化や伝統を重んじる肯定派、といったところでしょうか。

ちなみに私が見聞きしている限りでは「どっちでもいい派」が最大派閥で、私もこの意見です。
西暦単独表記が色々と楽になってすっきりはするのですが、和暦の持つ厳粛重厚な雰囲気が裁判や法律という堅いものにはよく似合うように感じられますので。


(『蒼生 2019年1月号』掲載記事)

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

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