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2017年4月17日 月曜日

弁護士費用特約について

以前、交通事故に関するコラムの中で『弁護士費用特約(弁特)』というものについて少し触れましたが、今回は弁特についてもう少し掘り下げてみます。


弁特とは、任意保険のオプションの1つで、交通事故被害に遭った人が相手方・相手方保険会社との示談交渉や裁判を弁護士に依頼する際の弁護士費用をこちら側の任意保険会社が負担してくれる、というものです。


保険会社によって若干内容は異なりますが、1件につき300万円まで保険会社が弁護士費用を肩代わりしてくれます。
弁護士費用が300万円を超えるケースというのは、寝たきりになるほどの重い後遺障害が残るような重大事故に限られてきますので、大半の交通事故の弁護士費用は補償の範囲内に収まることになります。


弁特が最も有用性を発揮するのは、停車中の追突事故、横断歩道の巻き込み事故等の過失ゼロの事故です。

完全な被害者となった場合、あなたが自動車の任意保険に加入していても保険会社は何もしてくれません。
自動車の任意保険は加入者が『加害者』となったときのためのものだからです。

しかし、弁特があればこういうケースでも自己負担なく弁護士に依頼できるため、安心して治療に専念できます。


弁特が驚異的なのは、「デメリットがほとんどない」という点です。
唯一デメリットとなり得るのが保険料ですが、弁特の費用は月額150円程度。
これだけの負担で実質無料で弁護士を使えて、補償対象は被保険者のみならず家族親族も、弁特を使っても以後の保険料は上がらず、しかも弁護士に交渉を任せれば慰謝料額が裁判基準まで引き上げられて示談金額が大幅増額。
余計な心配かもしれませんが、保険会社は赤字にならないのかが気になります。


実は、弁特の加入率は約8割にも上りますが、その利用率は0.05%と異常に低く、弁特を使えるのに使っていないケースが相当数あると推測されます。

弁特の利用者が増えると、最終的には弁特を売り出している保険会社が慰謝料増額の負担を被ることにも繋がるので、加入はさせても積極的に利用はさせていない、ということかもしれません。


保険会社の事情はともあれ、被保険者からすればきちんと保険料を支払っているわけですし、弁特は使わないと損なので、事故に遭ったら自分や家族が加入している保険を一度チェックしてみましょう。

(『蒼生 2017年1月号』掲載記事)

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

2017年3月15日 水曜日

弁護士が解説する刑事事件の流れ(6)~保釈その2~

前回の「弁護士が解説する刑事事件の流れ(5)~保釈その1~」に引き続き、今回も「保釈」について解説します。
裁判所が保釈を認める決定を出した、というところから話を始めます。

保釈請求書を裁判所に提出して、保釈が認められると、大体次のような許可決定が出ます。



 保釈許可決定
被告人 〇〇

被告人〇〇に対する〇〇事件について、弁護人〇〇から保釈の請求があったので、当裁判所は検察官の意見を聴いた上、以下のとおり決定する。

 主文
被告人の保釈を許可する。
保証金額は金〇万円とする。
釈放後は、下記の指定条件を誠実に守らなければならない。これに違反したときは、保釈を取り消され、保証金も没取されることがある。

 指定条件
被告人は、〇〇に居住しなければならない。住居を変更する必要ができたときは、書面で裁判所に申し出て許可を受けなければならない。
召喚を受けたときは、必ず定められた日時に出頭しなければならない。
逃げ隠れしたり、証拠隠滅と思われるような行為をしてはならない。
海外旅行または3日以上の旅行をする場合には、前もって裁判所に申し出て、許可を受けなければならない。
〇〇(被害者、共犯者等)とは、弁護人を介する場合を除いて、面会、電話、文書、電子メールその他いかなる方法によるとを問わず、一切接触してはならない。

 大阪地方裁判所 裁判官 〇〇



保釈許可決定が出る場合、保釈保証金(保釈金)の金額も同時に定められます。
被告人の経済状況にもよりますが、100万~300万円程度が中心的な金額帯です。
これを納めないと、身柄は解放されません。
当たり前ですが、「分割払いするので先に身柄解放を......」と言うことはできません。
減額の申し入れはできますが、経済状況が厳しいならば普通は保釈申立の時点でこれについても言及しているはずです。
それを踏まえての決定となりますので、減額に力を注ぐより、指定された金額の工面に努める方がいいでしょう。

本人の預貯金で保釈保証金を用意できない場合、次のような手段を検討することになります。

①家族、親戚、知人、金融機関からの借入
②日本保釈支援協会等の立替機関の利用
③全弁協保釈保証書発行事業の利用


①は何も難しいことはないので、②と③についてのみ解説します。


②は、日本保釈支援協会等に保釈保証金の立替を申し込む方法です。
審査が通れば、弁護人の預り口座に立替金が送金され、それを保釈保証金に充てることになります。

この方法を使う場合の注意点としては、以下のようなものがあります。
・被告人以外の者が申し込みをしなくてはならない(被告人以外の申込者が、没取の場合のリスクを負う)
・手数料を支払わなくてはならない(中心的な金額帯で、2か月ごとに4万~8万円程度)
・審査を通れば必ず全額を立て替えてもらえるというわけではない(一部自己負担を求められることもある)



③は、全弁協に保釈保証書の発行を申し込む方法です。
審査が通り、裁判所が保釈保証書による代納を許可し、自己負担金(保証金額の10%)を預託すれば、保釈保証書が発行され、これを裁判所に提出することになります。

この方法を使う場合の注意点としては、以下のようなものがあります。
・申込時に収入や資産に関する資料を提出しなければならない
・担保機能が不十分であることを理由に、裁判所が代納を許可しないことがある
・自己負担金は必ず用意しなくてはならない(ただし、後日返還される)
・手数料を支払わなくてはならない(保証金額の2%)



保釈保証金を納付し、または保釈保証書を代納して保釈されたら、
絶対に指定条件を破ることがないよう細心の注意を払って生活してください。

・出頭日と再就職先の面接日が重なり、裁判所に連絡せずに出頭をすっぽかした
・自宅を指定住所としていたのに交際相手の家に入り浸っていた
・被害者が友人や家族で、謝罪ならいいだろうと気軽に連絡を取った


指定条件を守って生活し、そのまま刑事訴訟が終われば、判決がどうであれ、保釈保証金は全額返ってきます。
しかし、指定条件を破ると、上記のようなケースでも、保釈保証金は没取(没収)され、保釈は取り消されます

刑事訴訟の手続は本当に厳格です。
「転居のことを弁護士や裁判所に連絡するのをうっかり忘れていた」
「ちょっとした挨拶や、反省の態度を示すことくらいなら大丈夫かと思った」

といったぬるい言い訳は一切通用しない、くらいに厳しく考えてください。


次回は、「被告人勾留」「公判」について見ていきます。

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

2017年2月17日 金曜日

弁護士が解説する刑事事件の流れ(5)~保釈その1~

前回の「弁護士が解説する刑事事件の流れ(4)~被疑者勾留~」では、比較的長期間の身柄拘束処分である勾留(被疑者勾留)について説明しました。
今回は、「保釈」について解説します。


保釈というのは、簡単に説明すると、
「一定額のお金を裁判所に納付することで被告人の身柄拘束を解いてもらう手続」
のことです。

保釈という言葉は一般の方にも比較的馴染みのあるもののようで、保釈に関する質問をよく受けます。
保釈に関する依頼や質問として多いのは次のようなものです。

・いつから保釈が可能になるのですか(早く保釈の手続を取ってください)
・保釈が認められないことはありますか
・保釈にはいくらかかりますか(保釈金を用意できません)
・保釈された後はどうすればいいですか


これらの回答も含めて、順に見ていきましょう。


まず、保釈が可能になる時期について。
保釈は、「『被告人』の身柄拘束を解く」ものです。
前回説明しましたが、『被疑者』は起訴されることによって身分が『被告人』に変わります。
つまり、まだ『被告人』になっていない『被疑者』を保釈することは法律のルール上不可能です。

ですから、
「家族が3日前に逮捕されて今も警察署にいます。すぐ保釈手続を取ってください」
という依頼があっても、これに対する回答は、
「今の段階で保釈はできません」
「起訴されてから保釈請求を行うか、準抗告等を検討することになります」
となります。



次に、保釈の種類について。
保釈には、「必要的保釈(権利保釈)」「裁量保釈(職権保釈)」「義務的保釈」の3種類があります。
実務で実際に問題となるのは前二者がほとんどなので、これについてのみ触れます。


必要的保釈というのは、
「一定の場合に該当するケース以外では保釈請求があったら保釈しなくてはならない」
というものです(刑事訴訟法89条)。

「一定の場合」というのは、次のようなものです。
・死刑または無期もしくは短期1年以上の懲役もしくは禁固に当たる罪を犯したとき
・前に死刑または無期もしくは長期10年を超える懲役もしくは禁固に当たる罪の有罪宣告を受けたことがあるとき
・常習として長期3年以上の懲役または禁錮に当たる罪を犯したとき
・罪証隠滅を疑うに足りる相当な理由があるとき
・被害者等の身体もしくは財産に害を加え、これらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき


要するに、一定の危険性を有する被告人以外については、請求があれば原則として保釈は認めますよ、ということです。

もっとも、4番目と5番目がなかなか曲者で、一般的な罪証隠滅や証人等威迫のおそれを理由に保釈が許可されないことがあります。
そういう場合には、被告人がそういう行動に出ないことを説得的に裁判所に説く必要が出てきます。


裁量保釈というのは、
「必要的保釈が認められない場合でも、裁判所が適当と認めれば保釈できる」
というものです(刑事訴訟法90条)。

必要的保釈の除外事由の1~3番目に該当するが、保釈を認めても差し支えないような場合に認められる保釈です。
(4、5番目に該当するだけなら必要的保釈を認めれば済む話であるため)

したがって、
「保釈が認められない場合はありますか」
という質問に対する答えは、
「一定の重罪を犯した場合や、罪証隠滅、証人等威迫のおそれがある場合は保釈が認められないことがあります」
となります。


少々長くなりますので、今回はここまでとして、残りは次回に回します。

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

2017年1月11日 水曜日

弁護士が解説する刑事事件の流れ(4)~被疑者勾留~

前回の「弁護士が解説する刑事事件の流れ(3)~逮捕前の対処~」では逮捕の概要や逮捕前に取るべき対応について触れました。
今回は、「被疑者勾留」について解説します。


軽微な犯罪で罪を認めていれば、逮捕後すぐに釈放されることもあります。
しかし、そうでない場合には「勾留(被疑者勾留)」という次の身柄拘束処分に移行することになります。


勾留期間は原則として10日間。延長があれば最大20日間
一部犯罪では最大25日間となることもありますが、これは国家転覆に関わるような極めて例外的な犯罪に限られるので、無視して結構です。


被疑者勾留の終了の仕方は大きく次の3つに分類されます。

1.起訴されて身分が「被疑者」から「被告人」に変わる
2.起訴されずに釈放される
3.身柄解放手続で釈放される


順に見ていきましょう。


勾留期間満了までに検察官が起訴した場合、刑事裁判を受けねばならなくなります。
起訴されることにより、「被疑者」という身分が「被告人」に変わります。
勾留処分については、ほとんどの場合で「被疑者勾留」「被告人勾留」に変わります。
被告人勾留になると、基本的に刑事裁判終了まで身柄拘束処分が続くことになります。
被告人勾留に切り替わった後、留置場所が警察署から拘置所に変わることがあります。
これは、警察署や拘置所の混み具合にもより、必ず移送される、いつ移送されると決まっているわけではありません。


検察官が起訴せずに勾留期間満了を迎えた場合、身柄は解放されます
「起訴されなかった=不起訴」と考える人が多いですが、「不起訴(起訴しない)」という処分はさほど多くなく、ほとんどは「起訴猶予(起訴するかどうかをもう少し検討する」というものです。
といっても、逮捕勾留までしておきながら、釈放後に改めて起訴するというケースは多くはないので、起訴されずに勾留満期を迎えれば、その事件は一応終結したのだと考えてよいでしょう。
ただし、後日捜査機関から呼出があったときは、必ず出頭に応じるようにしてください


被疑者勾留は、ほとんどが上記のいずれかで終結します。
しかし、稀に身柄解放手続で釈放されて被疑者勾留が終結することがあります。
逮捕と異なり、勾留には次のような手続が用意されています。

勾留を決めた裁判に対する異議申立である準抗告または抗告。
勾留の理由または必要性がなくなった場合になされる勾留取消。
被疑者または被告人が病気になった場合等に認められる勾留の執行停止。


ただし、これらが認められることはほとんどありません。
司法統計と実際に異議申立を行った実感からの推測とはなりますが、異議申立をした方がいいと思われる事情がある事案で、異議申立をして、それが認められるのは数%以下といったところです。
極めて狭き門と言ってよいでしょう。
異議申立をすべき事情があるのであればもちろんこれを行うべきですが、現実的なところを考えると、起訴されて被告人勾留となった後の保釈手続の方を検討した方がよい、となります。

次回は「保釈」の手続について見ていきます。

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2016年11月24日 木曜日

弁護士が解説する刑事事件の流れ(3)~逮捕前の対処~

前回の「弁護士が解説する刑事事件の流れ(2)~示談交渉~」では示談交渉の概要や示談金額について触れました。
今回は、「逮捕」「逮捕前に取るべき対処」について解説します。


逮捕には「通常逮捕」「緊急多穂」「現行犯逮捕」の3種類があります。

「通常逮捕」は、裁判官の発行する逮捕令状に基づいて行う逮捕です。
最も一般的な逮捕で、逮捕の原則型とも言えます。

「緊急逮捕」は、一定以上の重罪に該当し、緊急を要する場合に認められる逮捕です。
緊急逮捕をしたらその後直ちに裁判官に逮捕令状の発行を求める必要があります。

「現行犯逮捕」は、現行犯(犯行中の者、犯行直後の者)または準現行犯(一定の要件に該当し、犯行後間もない者)に対する逮捕です。
逮捕令状は必要なく、捜査機関でない一般人でも犯人を逮捕することができます。


逮捕された場合、釈放されなければ48時間以内に検察官に送致され、勾留という次の段階に進みます。
ちなみに、逮捕による身柄拘束を解くための異議申立、不服申立の手続は存在しません
そのため、逮捕されてしまったら勾留以降の手続で身柄解放の方法を検討することになります。



では、逮捕される「前」にすべきことはあるでしょうか。
緊急逮捕と現行犯逮捕については、「そもそも犯罪行為に走らない」以外の対処法がありませんので、通常逮捕を念頭に検討します。



捜査機関が通常逮捕を行うには、
「逮捕の理由(被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由)」

「逮捕の必要性(逃亡のおそれまたは罪証隠滅のおそれ)」
の有無を裁判官に判断してもらって、逮捕令状を発行してもらう必要があります。

しかし、裁判官の令状審査はフリーパス同然で、余程のことがなければ逮捕令状はそのまま発行されます。
そのため、被疑者側が手を打つとすれば、捜査機関が逮捕令状を請求する前、となります。


捜査機関にとって、被疑者を逮捕するメリットは次のようなものです。

・被疑者を監視下に置いて逃亡や罪証隠滅の可能性を軽減できる。
・捜査機関の都合のいい時に取り調べができるようになる。



その一方で、逮捕や被疑者勾留には時間制限があることから、

・逮捕してから2~3週間程度以内に捜査を完了させて処分を決めなくてはならない。

というデメリットもあります。


つまり、時間制限のある逮捕という手段によらなくても上記メリットを実現できることを示せばいいのです。

具体的には、
「捜査機関の出頭要請があれば必ずこれに従う」
「事情聴取の際には聞かれたことに素直に正直に答える」
「罪証隠滅を疑われるような行動を取らない」

といった対応を取ることが逮捕回避のために重要となります。


もちろん、こういった対応を取っていても、逮捕されるときは逮捕されます。
しかし、人身事故等の交通違反や、痴漢等の比較的軽微な犯罪は、上記対応で逮捕の可能性を大きく下げることができます。
また、並行して被害者との示談を進めることも逮捕回避に繋がります。


次回は「勾留」の手続について見ていきます。

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

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