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2018年8月21日 火曜日

認知症に対する法的備え(2)

前回は後見制度の概要について触れました。
今回は後見制度の問題点について見てみます。


最初に把握しておきたいのは
「後見は本人の財産を守る制度として設計されている」
ということです。

認知症のAさんに子B、孫Cがいたというケースで見てみましょう。

Aさんは孫Cの学費を払うと昔から言っていましたが、認知症になって銀行が預金払戻に応じてくれなくなりました。
困った子Bが法定後見の申立を行い、弁護士Dが後見人に。
一安心した子Bに弁護士Dが告げます。

「Aさんの預金から孫Cの学費を支出することは認められません」

と。


成年後見は「本人の財産を守る」制度ですから、

・本人の財産を減らして第三者の利益を図る行為(孫の学費を援助してもらう、生前贈与や生命保険で相続税対策を行う)
・財産の減少を招き得る行為(元本保証がなく損失が生じる可能性のある株式その他の投資)

は基本的に認めてもらえないのです。


他には「後見・補佐が開始すると取締役の資格を失う」ということも重要です。
取締役に欠員が生じることになるので、会社によっては速やかに代わりの取締役を探し出して選任する必要が生じます。

「後見人が預り財産を横領する可能性がある」ということにも注意は必要でしょう。
後見全体に占める割合としては低いものの、弁護士や司法書士による横領事件も一定数発生しており、専門家だから絶対に安心とは言い切れません。


もっとも任意後見ならこれらの問題の多くを回避できます。
任意後見の場合は信頼のおける後見人を自分の意思で選べますし、事前に本人の意思を確認しておけばかなり柔軟な対応が可能となります。
例えば「孫の学費を大学卒業まで払う」という任意後見契約を予め締結しておけば、認知症となった後も孫の学費援助を継続できるようになるのです。


成年後見の最大の利点は「信用できない人間が本人の周囲にいる場合の抑止力になる」ということ。
本人の財産を食い潰そうとする悪徳業者や同居親族がいる場合、後見人をつけていればその被害はほぼ確実に防ぐことができるようになります。


2025年には認知症患者が700万人を超えると言われる時代。
来るべきときに備えて後見制度を正しく活用することが自分自身や家族を守ることに繋がるのかもしれません。


(『蒼生 2018年7月号』掲載記事)

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

2018年6月14日 木曜日

認知症に対する法的備え(1)

高齢化社会では認知症になった人の財産管理をどうすればよいかということが問題となります。

判断能力が低下した人の財産を守る制度としては「成年後見」というものがあります。
これは判断能力低下の程度に応じて「補助人」「保佐人」「成年後見人」といったサポートをする人を付けて、認知症に付け込んで財産を巻き上げようとする悪徳業者等から本人の財産を守ろうというものです。
未成年の子に対する保護者の役割と似ています。

後見には親族等から申立があったときに裁判所によって後見人が選任される「法定後見」と、将来自分の判断能力が低下したときに備えて予め後見人を選んでおく「任意後見」があります。

法定後見は、判断能力が低下してしまった後、親族等からの申立によって手続が開始します。
判断能力について診断した医師の診断書を裁判所に提出して、補助・補佐・後見のいずれに当たるのか判断してもらいます。

補助や補佐の場合、本人の判断能力がある程度残っているため、補助人・保佐人の同意がなければ借金をしたり不動産を処分したりできないようになります。

後見は本人の判断能力がないものとみなされた状態なので、後見人が財産管理を一手に担うことになります。


法定後見は、その申立をする時点で本人の判断能力が低下してしまっているわけですから、その開始に当たっていくつか問題点があります。

一つは「後見人を選べない」ということ。
申立時に候補者の希望を出すことはできますが、多くのケースで弁護士や司法書士といった法律に詳しい第三者が選任されます。
これは家族間のトラブルを防いで公平な立場から財産を管理させるためです。

もう一つは「本人に中途半端に判断能力が残っている場合に申立自体ができないことがある」ということ。
判断能力低下の程度が一番軽い「補助」の場合、補助開始の審判を行うには本人の同意が必要となります。
本人が「自分はまだしっかりしている!」と反抗したら申立自体ができないのです。

任意後見ならこれらの問題はクリアできますが、自分が認知症になった時の備えを早くからできる人というのは稀です。
また、任意後見であっても後見という制度の特質上、一定の問題は発生します。

次回は成年後見の問題点について触れてみます。

(『蒼生 2018年4月号』掲載記事)

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

2018年5月14日 月曜日

相談内容をどう伝えるか

法律相談は初回30分を無料としている事務所が多いです。
法テラスの無料法律相談も30分以内で、役所の無料法律相談では20分~25分程度としているところもあります。
かなり効率よく相談しないと時間内に収まりません。

事実説明が上手い人というのは極めて少数です。
私の事務所では1時間の無料法律相談枠を取っていますが、それでも若干オーバーすることがほとんどです。

どうすれば効率よく余裕をもって相談できるのか。
以前にも一度触れましたが、今回はもう少し掘り下げてみたいと思います。

説明が長い人には、「とにかく丁寧に説明しないと弁護士は自分の悩みをわかってくれない」と思い込んでいる、という共通した特徴があります。
まずはこの思い込みを捨てましょう。
弁護士は心理カウンセラーではなく、法律問題の解決策を答えてくれる人です。
説明が長い人の話の8~9割は基本的に法律相談に不必要な情報です。
がんばって説明している時間のほとんどが無駄な時間なのです。

法律相談が時間ギリギリになる、自分は説明下手なのでは、という人には次の手法がオススメです。

まず一息で言い切れる短い文で最初に結論だけ述べます。
例えば「友人に貸した100万円を返してほしいのでこれを回収する方法を知りたいです」というように。
そうすれば弁護士はその結論を念頭に置いて話を誘導しながら聞いてくれます。
大事なのは一息で言い切れることです。
息継ぎが必要ならまだ無駄がある証拠なのでもっと削ってください。

次に自分から延々と話をしないようにします。
先に結論を述べておけば、弁護士の方から一つ一つ必要な情報を尋ねてきます。
それに答えていくのです。

そして一つの問いには一つの回答をします。
ついでにこれも伝えよう、と考えてはいけません。
法的アドバイスに必要な情報は必ず弁護士の方から聞いてきます。
どうしても伝えたいことがあれば弁護士からの質問が一通り終わってから伝えましょう。

これを徹底させればどんな事案でも時間内に弁護士からのちゃんとした回答が得られるはずです。
...といっても大概の人は喋りたがりなので、これを徹底させるのは難しいのですが。
ただ、意識するだけでもだいぶ変わってくるはずです。
問診等でも使えるやり方なので是非試してみてください。

(『蒼生 2018年1月号』掲載記事)

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

2018年2月27日 火曜日

電話で無料法律相談できる弁護士は少ない(2)

前回記事「電話で無料法律相談できる弁護士は少ない(1)」で、電話相談に対応している法律事務所が少ない理由を説明しました。

それでも電話相談を希望する人はどうすればよいのか。
今回はその点に触れてみます。


弁護士に(無料で)電話相談したいという人は大体次のパターンに分類されます。

(A)大したことのない質問なので法律事務所に赴く手間が惜しい
(B)弁護士に対応可能な問題なのかどうかを先に確認しておきたい
(C)仕事が忙しくて平日の日中に法律事務所に赴く時間が取れない
(D)入院等していて物理的に法律事務所に出向くことが困難である



そして、電話での法律相談に対応している事務所が少ない理由は次のとおり。

(1)電話相談の体制を取るとはコストがかかる
(2)受任に繋がらず弁護士側にメリットがない
(3)電話相談では正確なアドバイスができない



この(A)~(D)の分類、(1)~(3)の理由を踏まえて、対応方法を見ていきます。



(A)大したことのない質問なので法律事務所に赴く手間が惜しい
電話相談の希望で一番多いパターンがこれです。
相談者自身が「大したことのない質問」と考えているわけで、事件性はほぼありません。

これに該当する方は、自分の聞きたいことをGoogle等で検索することをお勧めします
電話相談可能な弁護士を探すより手間がかからず、おそらくそれで事足ります。

それで納得できない方はがんばって電話相談可能な弁護士を探してください。
前記(1)をクリアできる新興大規模事務所等で対応可能な場合があります。
ただし、(2)(3)の理由があることに留意してください。
相談可能な分野は収益性の高い分野に限定されていることがほとんどです。
また、美味しい事件と判断されたら(3)を理由に来所相談を勧められるはずです。



(B)弁護士に対応可能な問題なのかどうかを先に確認しておきたい
これは(A)寄りなのか、(C)(D)寄りなのかによって変わってきます。

(A)寄りの方は(A)と同じ対処で構いません。

(C)(D)寄りの方は事務所に行けない理由を受付の事務員に伝えてください。
あなたの状況や相談内容に合わせた方法を提案してもらえると思います。



(C)仕事が忙しくて平日の日中に法律事務所に赴く時間が取れない
弁護士に特にこだわりがなく、夜間や土日なら法律相談に行ける場合。
夜間休日対応の法律事務所を探してください。
電話相談ができる法律事務所よりは簡単に見つかるはずです。

相談したい弁護士がいるけれど、営業時間内に相談に行けなさそうな場合。
とりあえず問い合わせて、営業時間外に対応してもらえるか聞いてみましょう。
内容によっては営業時間外でも対応してもらえることがあります。



(D)入院等していて物理的に法律事務所に出向くことが困難である
事務所に行くことができない理由を受付の事務員に伝えてください。
どのような対応方法があるか、説明してもらえるはずです。

また、交通事故で入院していて弁護士費用特約(弁特)付きの保険がある場合。
受付の事務員にそれを伝えてください。
かなりの高確率で弁護士が病院等への出張法律相談に応じてくれます。
法律相談の費用は保険会社の負担となるので、その点を悩む必要はありません。




大体こんな感じでしょうか。

現在、当事務所では電話での法律相談は受け付けていません。
以前、試験的に電話相談を受け付けてみたことがあります
しかし、相談の質が大幅に下がり、電話が鳴り続けて仕事にならないのですぐに打ち切りました。

(A)の方の法律相談希望の電話は全てお断りしています。
(B)(C)(D)の方にはそれぞれ適切と思われる対応を取っています。
遠方にお住まいの方が2回目以降の相談で電話相談を希望した場合、これをお受けすることはあります。

私もそれなりに多忙の身なので、電話相談には対応できないという点をご理解ください。
その分の時間と手間は、私を信頼して事件を依頼してくださった方のために回しています。


弁護士が電話相談を基本的に受け付けていないのには相応の理由があります。
電話相談可能な弁護士を探している方は、上記を参考に対応を検討してください。


対面での法律相談を希望される方は「ご相談の流れ」をご参照ください。
初回概ね1時間程度、無料とはいえ手を抜かず、弁護士がしっかりとあなたの相談内容を伺います。

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

2018年1月26日 金曜日

電話で無料法律相談できる弁護士は少ない(1)

弁護士の電話相談を希望する人は一定の割合で存在します。
一方、電話での法律相談に対応している法律事務所はほとんどありません。

なぜ、弁護士は電話での法律相談に消極的なのでしょうか。
電話相談に対応している法律事務所が少ない理由を以下に挙げてみます。


(1)電話相談はコストがかかる
法律相談に対応できるのは弁護士だけです。
弁護士資格を持たない事務員やパラリーガルは法律相談を実施できません。

時々弁護士会や地方自治体が無料電話相談を実施することがあります。
このときは電話相談用の弁護士を用意して電話口で待機させます。
担当弁護士は他の仕事をせず、電話の前で電話が鳴るのを待ちます。
そして、電話の有無にかかわらず、拘束時間に応じた日当が支払われます。

普通の事務所はこんな無駄なことはしません。
弁護士がやるべき仕事は他にいくらでもあるからです。
まともな電話法律相談の体制を取ると無駄なコストが発生するのです。


(2)受任に繋がらず弁護士側にメリットがない
最近は初回無料法律相談を行う法律事務所が増えています。
法テラスや役所での定期的な無料法律相談もあります。
弁護士が無料法律相談に対応するのは、それが事件受任に繋がる営業活動だからです。

同じ無料相談でも、電話相談と対面相談では異なっている点があります。
それは、悩みに対する相談者の切迫度や真剣さが全然違うということです。
端的に言って、電話相談を希望する人の相談内容は基本的に受任に繋がりません
時間と手間を取られて利益は生み出さず、弁護士側のメリットに乏しいのです。


(3)電話相談では正確なアドバイスができない
法律相談では相談者が持参した資料にきちんと目を通すのが鉄則です。
相談者が口で説明した内容を鵜呑みにするようでは弁護士失格と言ってよいでしょう。

交渉でも訴訟でも物証が成否勝敗を左右するので、法律家は物としての証拠を重視します。
人間は見間違い、聞き間違い、記憶違い、言い間違いをします。
電話口で書面を読み上げたとしても、重要部分の説明を抜かすこともあります。
弁護士が資料を確認できない電話相談ではまともな法的アドバイスは期待できないのです。



他にもいくつか理由はありますが、大きなところとしてはこんなところです。

要するに、
①無料電話相談はコストがかかる割に、
②重要な悩みではなく受任に繋がらず、
③正確で適切なアドバイスができない。

だから無料電話相談を導入している法律事務所は少ないのです。



それでも、
「弁護士に(無料で)電話法律相談をしたい」
という方はいるでしょう。

そういう方はこの問題にどう対処すればよいのか。
少々長くなりましたので、この点は次回記事にて述べさせていただきます。

投稿者 士道法律事務所 | 記事URL

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